- 2021/1/27
- 株式市場関連ニュース
米国債の利回り上昇に懸念 巨額資金集まる水準が一歩手前に迫る

- 利回り上昇を続ける米国債が、海外の投資家が買いを考える水準に近づいた
- 欧州と日本の投資家は、10年物米国債の利回りが1.25-1.3%、30年債が1.92-2%になった水準になったら買い増そうと考える
- アジアと欧州の運用者は、米国債の利回りのピークは目前にあるとみる
長期国債は2020年3月以来の水準
30年物国債(上)と10年物国債(下)に利回り。高水準で推移していることがわかる。 引用元:https://www.bloomberg.co.jp/
利回り上昇を続ける米国債が、海外の投資家が買いを考える水準まで近づいている。ジョージア州の上院選決戦投票の結果、米国の政権と議会が民主党の下にまとまったことでインフレ期待が高まったことが要因で、長期の米国債利回りは2020年3月以来の水準まで上昇。世界から巨額の投資資金が流入する可能性があり、利回り上昇が抑制されるとみられている。
10年物国債は6日に1%を突破。1月15日には一時、1.19%と10ヶ月ぶりの水準となった。30年物国債も、20年3月以来の2%到達が目前に迫っている。
このことから、米経済を観察しているアジアと欧州の運用者は、米国債利回りのピークは遠くないのではないかと分析している。新型コロナウイルス感染急増とワクチン接種の普及の遅れによって、後ろ倒しだった景気回復の波が一気に来ると予想されるからだ。
一方、米議会の民主・共和両党勢力が拮抗しているほかトランプ大統領の弾劾プロセスも進められる中、バイデン次期米大統領の1兆9000億ドル(約197兆円)の景気対策が壁に直面する可能性も高い。
欧州と日本の投資家によると、10年物米国債の利回りが1.25-1.3%、30年債が1.92-2%の水準に達した時、買い増しが起きるという。
有識者の期待も大きい。ブルーベイ・アセット・マネジメントの最高投資責任者(CIO)、マーク・ダウディング氏(ロンドン在勤)は、「新型コロナ感染の動向が経済指標への下押し圧力になっている」と指摘。「向こう数カ月の10年債利回りは1-1.25%程度で推移するだろう」と予測する。このレンジ(1-1.25%)の上限を超えたら買うつもりだと明らかにした。30年債の買いの目安は2%だという。
アバディーン・スタンダード・インベストメンツのロンドン在勤マネーマネジャー、ジェームズ・エイシー氏は、景気見通しへのリスクは下振れ方向が優勢だとの見方で、「10年債利回りが1.25-1.3%に達すれば、ロングポジションを増やしてもよいと感じるだろう」と述べた。
一方、日本の投資関係者は比較的慎重な見方。アライアンス・バーンスタインの駱正彦債券運用調査部長は、日本の投資家が10年物米国債を買うのは利回りが1.3%になってからとの見方を示している。
- 米国債
- 米国債は、「米国財務省証券」とも呼ばれ、米国の財務省が発行する国債。国の財政資金の不足を補う目的があるが、世界最大の売買量と発行残高を誇っており、流動性と信頼性が高い特徴がある。そのため、為替リスクを考慮しても、魅力のある債券とみなされている。参考:東海東京証券
- 下押し圧力
- 下押すとは、相場が安くなる傾向が強まること。株価に限らず、景気の状況を説明する際に使われる。景気が下押し局面では、株価が下落するとともに、債券が変われるため、長期金利が低下する。為替が円に売られやすくなるため、円安トレンドになるケースが多くみられる。参考:乙女の財布