- 2021/1/27
- 不動産知識
マンション売却をしたら確定申告するべき?見極め方法から手続き方法まで解説

マンションの売却をおこなった後、確定申告が必要はどうかご存知ですか?
会社員をしていると確定申告は会社が代理でおこなってくれるので、確定申告の仕組みや正しい手続き方法を知っている人は少ないかもしれません。
ですが、マンションを売却すると場合によっては確定申告が必要となるケースがあります。
本記事では、マンション売却時に確定申告が必要なケースの紹介と、その手続き方法を解説します。
マンションを売却された方はぜひ参考にしてください。
マンション売却で確定申告は必須ではない
マンション売却では、確定申告は必須ではありません。
確定申告が必須なのは、マンション売却時に「譲渡所得」が出た場合です。
一般に株式や土地、建物などを譲渡(売却)して得られた所得のことを譲渡所得と言います。
この譲渡所得が発生したかどうかで確定申告が必要かどうかが分かれるのです。
「譲渡所得」が出た場合は申告が必要
マンションを売却して譲渡所得が出た場合は、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をしなければいけません。
確定申告が必須なのは、マンション売却で「譲渡所得」が出た場合のみです。
買った値段以上の価格でマンションを売却したら、確定申告が必須になるというわけではありません。
この譲渡所得の算出方法については、後述で解説していきます。
譲渡所得が出たのに確定申告を怠ってしまうと、「延滞税」を請求されてしまうので注意しましょう。
確定申告が不要なケース
マンションを売却しても確定申告が不要なのは、利益が出なかった場合です。
確定申告は、収入を申告して適正な税金を納めることを目的にしているので、利益が出なかった場合の確定申告は必須ではありません。
確定申告は会社員には馴染みが薄いので、手続きが面倒だと感じた場合は確定申告をしないという手もあります。
利益が出ていなければ、延滞税を請求される心配もないので安心してください。
不要でも確定申告で恩恵を受けられる可能性
マンション売却で利益が出なかった場合でも、確定申告をするメリットはあります。
マンション売却の損失を確定申告に計上することで、「損益通算」を適用できるからです。
損益通算を適用すれば、譲渡損失が出た場合に譲渡所得税が免除になり、さらにマンションを売却した年とは別の年の所得と相殺することができます。
譲渡損失の金額だけ所得を減らせるので、住民税や所得税の減税が可能です。
譲渡損失額が大きくて売った年だけでは相殺しきれない場合は、翌年以降に繰り越せる「繰越控除」を申請できる可能性があります。
マンション売却後の確定申告に必要な書類
マンション売却後の確定申告に必要な書類は、自分で用意するものと税務署で用意されているものに分かれます。
確定申告に不備がないように、それぞれの書類を紹介していきます。
確定申告をする際の参考にしてください。
自分で用意する書類
自分で用意する書類は、以下の通りです。
- 売却時の売買契約書
- 購入時の売買契約書
- 仲介手数料や印紙税の領収書
売却時の売買契約書と購入時の売買契約書は、売買契約の際に入手できます。
仲介手数料や印紙税の領収書は、マンションの売却が完了したら不動産会社から発行してもらいましょう。
上記は基本的に全て無料で入手でき、売却時の売買契約書と購入時の売買契約書だけは印紙代がかかります。
税務署で用意される書類
税務署で用意される書類は、以下の通りです。
- 確定申告書B様式
- 分離課税用の確定申告書
- 譲渡所得の内訳書
上記は税務署に行くか、国税庁のホームページからダウンロードして用意してください。
どれも全て無料で入手できます。
マンション売却後の確定申告の流れ
マンション売却から確定申告までの流れは、以下のようになっています。
- マンション売却時の書類を用意
- マンション取得時の書類を用意
- 確定申告書を用意
- 譲渡所得を計算
- 譲渡所得を計算
- 確定申告書を提出
確定申告の手続きで不備がないように、詳しい流れを解説します。
マンション売却時の書類を用意
まずは、マンション売却時の売買契約書を用意してください。
売買契約書には、以下のような書類が含まれます。
- 売買契約書のコピー
- 売買代金受取書のコピー
- 増改築時の請負契約書
- 領収書のコピー
- 固定資産税精算書のコピー
- 仲介手数料などの領収書のコピー
- 不動産登記事項証明書
- 登記費用などの諸費用の領収書
- 売却した土地・建物の全部事項証明書
- 住宅借入金などの残高証明書
住宅借入金などの残高証明書は、ローンが残っている場合は必ず用意しましょう。
ローンが残っている場合に売却利益で完済できるか判断するために必要だからです。
マンション取得時の書類を用意
確定申告には、マンション取得時の書類も必要になります。
- 仲介手数料などの領収書のコピー
- 固定資産税の精算書のコピー
確定申告では取得時の情報を確認されるので、忘れずに用意しておきましょう。
確定申告書を用意
マンションに関する書類が揃ったら、次は以下の確定申告書を用意します。
- 確定申告書B様式
- 分離課税用の確定申告書(申告書第三表)
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表と計算明細書)
近所に税務署があれば、税務署に取りに行ってください。
もし、近場に税務署がない方や仕事で税務署に行けない方は、国税庁のホームページから用紙をダウンロードできます。
譲渡所得を計算
確定申告をおこなうためには、譲渡所得の計算が必要です。
譲渡所得の方法は、以下の通りになっています。
「譲渡所得=譲渡収入金額ー譲渡取得費ー譲渡費用」
譲渡所得を計算するために、各項目の算出方法から紹介していきましょう。
譲渡価格の算出方法
譲渡価格は、マンションを売却した際の売却金額です。
以下の計算式で算出できます。
「譲渡価格=マンションの売却金額 + 固定資産税・都市計画税清算金」
固定資産税と都市計画税清算金には、売主が前払いした金額を入れます。
時折、売却時に買主から管理費や修繕費の一部を受け取ることがありますが、これは譲渡価格に含まれません。
譲渡取得費の算出方法
譲渡取得費は、マンションを取得した際の購入金額です。
以下の計算式で算出できます。
「譲渡取得費=マンションを取得した費用-減価償却費相当額」
マンションを取得した費用だけでは、マンションの経年劣化が反映されていません。
そこで、減価償却費相当額を差し引くことでマンションの適正な所得費を計算します。
減価償却費相当額の計算方法は、以下の通りです。
「減価償却費相当額=建物購入価額×0.9×償却率×経過年数」
償却率は、以下のようにマンションの構造によって異なります。
- 鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造 / 0.015
- れんが造・石造・ブロック造 / 0.018
- 金属造(骨格材の肉厚4mm超) / 0.020
- 金属造(骨格材の肉厚3mm超4mm以下) / 0.025
- 金属造(骨格材の肉厚3mm以下) / 0.036
- 木造 / 0.031 ・木骨モルタル造 / 0.034
譲渡所得から税額を算出
譲渡所得を算出したら、最後に税額の計算です。
マンションの税額は、所有していた期間によって異なります。
- 5年以下の所有 / 39.63%
- 5年超の所有 / 20.315%
5年以下の場合は「短期譲渡所得」という区分になり、5年を超えると「長期譲渡所得」という区分になります。
確定申告書を提出
確定申告書の提出方法は、以下の3種類です。
- 税務署に直接行く
- 郵送でおこなう
- e-Taxを利用する
確定申告が不安な方は、税務署に直接行くことをおすすめします。
税務署では確定申告会場に複数の職員がいるので、申告方法から書類のチェックまでその場でおこなってくれるからです。
万が一記載漏れや不備があっても、すぐに修正できるので安心して確定申告をおこなえるでしょう。
税務署に行けない場合は、郵送での確定申告書の提出も可能です。
注意点として、封筒の中に確定申告書と返信用の封筒を同封してください。
返信用の封筒がないと、税務署の印が入った控えが受け取れません。
後日では税務署の印は押してもらえないので、必ず返信用の封筒を同封しましょう。
パソコンが使える方は、e-Taxでの確定申告が便利です。
e-Taxがあれば、自宅から簡単に確定申告書の送付ができます。
注意点としては、e-Taxを利用するためには「マイナンバーカード」と「電子証明書の発行」が必要です。
マイナンバーカードは発行に時間がかかるので、事前に役所で申請をおこないましょう。
マンション売却による控除特例
マンション売却の際に、条件によっては控除が受けられます。
控除は譲渡所得にも影響してくるので、マンション売却時の控除について紹介していきましょう。
譲渡所得が出たときの控除特例
マンション売却で譲渡所得が出た時に、特定の条件が整えば以下の「控除特例」を受けられます。
- 3000万円特別控除特例
- 軽減税率特例
- 買い替え特例
譲渡所得を最大限受け取れるように、それぞれの特例について解説していきます。
3000万円特別控除特例
3000万円特別控除特例は、自分が住んでいる不動産を売却した際に、最大3000万円の特別控除が受けられます。
以下、3000万円特別控除特例の条件です。
- 自分が住んでいた不動産である
- 災害などが理由の滅失家屋の敷地で、退去時から3年以内に売却している
- 売却した不動産や土地で、収用などの場合の特例が適用されていない
- 過去2年間で当特例もしくは譲渡損失に関しての特例が適用されていない
- 過去2年間でマイホーム買い替えや交換に関しての特例が適用されていない
- 不動産の売主と買主が、親子や夫婦などの関係でない
3000万円特別控除特例を適用するためには、別途「住民票除票」が必要です。
住民票除票を受け取るためには、不動産の売買から2ヶ月後に、不動産会社が所在する地域の役所に取りに行く必要があります。
軽減税率特例
軽減税率特例は、10年以上所有したマンションを売却した際に認められる軽減税率です。
以下、軽減税率特例の条件になります。
- 自分が居住していた国内の不動産、または不動産と土地の売却
- 売却年の元日時点で不動産屋土地の所有が10年を超えている
- 過去2年間で当該の特例もしくは譲渡損失の特例が適用されていない
- 当該の不動産や土地でマイホーム買い替えや交換の特例が適用されていない
- 不動産や土地の売主と買主が、親子や夫婦などの関係でない
軽減税率を適用するためには、別途「住民票除票」と「登記事項証明書」が必要です。
登記事項証明書は、請求対象の不動産を管轄する登記所で受け取れます。
買い換え特例
買い替え特例は、マンションの売却後に住居として新しい不動産を購入する際の特例です。
以下、買い替え特例の条件になります。
- 不動産の売却価格が1億円以下
- 購入する不動産が耐火建築物の中古物件である場合、築25年以内のものか、もしくは一定の耐震基準を満たしている
- 購入する不動産が耐火建築物でない中古物件である場合、築25年以内のものか、もしくは取得期限までに一定の耐震基準を満たす見込みがある
- 購入する不動産の延床面積が50平方メートル以上、なおかつ土地の面積が500平方メートル以下
- 売却した年を挟んで3年の間に新居とする不動産を購入する、また一定期限までに入居する
買い替え特例を適用するためには、以下の書類が必要になります。
- 売却した不動産の登記事項証明書
- 買換資産の明細書
- 代替資産の取得期限延長承認申請書
- 先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書
- 購入した不動産の関連書類
購入した不動産の関連書類は、売買契約書のコピーなどです。
代替資産の取得期限延長承認申請書、先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書は、税務署で直接受け取るか郵送での申請ができます。
譲渡損失が出たときの控除特例
特別控除は、譲渡損失が起きた場合にも以下の2種類が用意されています。
- 買い換えなどによる譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例
以下、買い換えなどによる譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例の条件です。
- 売却したマンションを5年以上所有していた
- 購入した不動産の延床面積が50平方メートル以上である
- 売却した年を挟んで3年の間に購入した
- 購入した年の大晦日の時点で、購入した不動産のローンが10年以上残っている
- 購入した翌年の大晦日までに入居する見込みがある
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例は、以下の通りです。
- 売却した不動産を5年以上所有していた
- 売買契約を結ぶ前日の段階で、住宅ローンが10年以上残っている
もし、譲渡損失が発生した場合は、上記の条件に当てはまるか確認してみてください。
条件に当てはまる場合は、特別控除が受けられます。
確定申告をお忘れなく!
マンションを売却して譲渡所得が発生した場合は、確定申告が必要です。
万が一申告を怠ってしまうと、延滞税を請求されてしまうので注意してください。
確定申告をおこなう際には、自分で用意する書類と税務署で用意される書類が必要になります。
仕事などで税務署に行けない方は、国税庁のホームページから用紙をダウンロードできます。
また、マンション売却の確定申告では、控除特例が適用されるケースがあるので、本記事を参考に控除特例が使えるかどうか確認しましょう。
控除特例を使えば、より多くの譲渡所得の獲得や譲渡損失の軽減ができます。
マンション売却の利益を受け取るために、正しい確定申告をおこなってください。