- 2020/12/14
- 不動産知識
不動産投資で無視できないキャッシュフローについて徹底解説!|キャッシュフロー黒字化に向けた施策5例も紹介

不動産投資を円滑に進めていく上で、事業上の収支も大事なのですが、キャッシュフローはもっとも重要と言えます。
不動産投資には様々なリスクが付きまとう中で、手元にキャッシュを残しておくことで、急な支出にも対応するなど運用しやすくなります。
今回の記事では、不動産投資におけるキャッシュフローの重要性を挙げながら、どのようにキャッシュフローを計算して、黒字にしていくための運用方法について解説していきます。
不動産投資において「キャッシュフロー」はなぜ重要なのか
不動産投資に始めるにあたって、節税目的で始めようと考えている方も多いかもしれません。
しかし実際に不動産を扱う事業を運営していくためには、キャッシュフロー黒字にしていくことが重要になり、すでに不動産で一定の成果を収めている方も、キャッシュを重要視している方が多くいらっしゃいます。
「なぜキャッシュフローが大事なんだろう?」と思っている方は、ぜひ今後のためにも押さえておきましょう。
不動産運用上、必要かつ急な出費にも耐えうる体制を作るため
不動産投資において現預金を持っておくことが非常に重要な要素となります。
ローンを活用していれば、毎月の返済を滞らずに返済していく必要がありますし、所有する不動産に修理が必要な箇所が出てくれば、負担しないと次の入居者が入居してくれなくなってしまいます。
収支上は黒字であっても、現預金が手元になければ不動産経営の運用すらままならない状態になってしまいます。
そのため収支も大事ですが、プラスのキャッシュフローを積み重ねていくような計画と運用が不動産経営においては重要になるのです。
生活資金や給料等他の資金を使わずに運用するため
例えば、毎月発生するローンの返済額よりも家賃収入が少なければ、自らの資金から手出しをしなければいけなくなります。
また修繕などの大きな支出が伴う場合には、どうしても不動産のキャッシュフローでは足りなくなるような場面も出てくるかもしれません。
不動産投資の初期の段階から、キャッシュフローをプラスにしていく意識が重要になり、最終的には不動産経営の中で資金を回していくことが理想の形と言えます。
不動産売却の際に大きなアドバンテージになるため
キャッシュフローをプラスに出来ている物件は、裏を返せば家賃を下げる必要がないほどに不動産価値を維持しているともいえます。
こういった物件は売却を検討する際にもプラスに働くことが多く、売却価格を試算する査定においても重要視されています。
投資不動産を購入する側に立てば、やはり収益性を高く生み出している不動産を買いたくなります。それだけキャッシュフローがプラスを維持できていることは、売却側にとっては有利に働きます。
初心者こそキャッシュフローが重視される
不動産投資では、初期に費用が多くなり、その後ある程度落ち着いて、修理・修繕のタイミングでまた支出が多くなるといった流れが多く見られます。
特に初期は自己資金やローンを利用して、十分な資金状態から始めていくので、問題なく回していくこともできるのですが、空室が出てしまったり、修繕のタイミングでローン返済などの資金繰りに苦しんでしまうオーナーさんの例はよく見受けられます。
そのためにも、将来的なキャッシュフローを予測しながら、初期こそキャッシュフローをプラスにしていくことを重要視しましょう。
あなたの不動産は上手く回ってる?キャッシュフローの計算方法とシュミレーション
そうとはいっても、不動産について十分な知識が備わっていない中で、将来的な不動産投資のキャッシュフローを自分で予測していくのは、非常に難しいことです。
ここからは、初心者でも簡単に行える不動産投資のキャッシュフローについて解説していきます。投資していく物件を選ぶ際にも重要な判断要素となるので、しっかりと理解しておきましょう。
初心者でも簡単!不動産投資のキャッシュフロー計算書
基本的に不動産経営における収入源は、入居者から受け取る家賃収入になります。その中からローンの返済や税金の納税、各種経費の支払をしていくことになります。
不動産投資のキャッシュフロー=(家賃収入)-(ローン返済)-(諸経費)
簡単な例を挙げながら、どのようにキャッシュフローを計算していくのかみていきましょう。今回の条件は以下を想定して計算していきます。
【想定不動産】
・物件価格:2,000万円
・家賃:9万円
・経費:1.8万円
・借入金額:1,800万円
・借入期間:35年
・利率:2%
・毎月の返済額:59,628円
このような条件の場合、家賃収入は90,000円になります。
支出は経費の18,000円と返済額の59,628円を合わせて77,628円となります。
したがって、毎月13,000円弱のプラスとなります。
今回は、初心者の方でもイメージしていただくために、購入した1部屋が常に入居者がいる状態を想定しています。
実際のシュミレーションでは、空室率やローンの借入条件や返済方法、建物の構造から修繕にかかる費用や設備交換にかかる費用などを見積もって詳細に計算をしていくことになります。
このようなシュミレーションを自分一人では難しいと感じた方は、各種サイトでも不動産投資シュミレーションツールが公開されていますので、徐々に理解を深めながら活用してみましょう。
会計帳簿上の収益とキャッシュフロー収支の違い
ご覧になられている方の中には、そもそも「キャッシュフロー」という言葉に馴染みの無い方もいらっしゃるかもしれません。また会計帳簿上の収益とキャッシュフロー上の収支がどう違うのか、意外と知らないという方も少なくありません。
会計上の収益というのは、簡単に言えば売上から費用を差し引いてどのくらいの利益が残るのか。そしてどのくらいの税金を払う必要があるのか計算するためのものです。
一方でキャッシュフローの収支は、現預金の流れを表すもので、単純に手元にどのくらいお金が残るのかを計算していくものになります。
例えば、不動産の経年劣化による価値低下を費用として認識する減価償却費は、会計上は費用として認識しますが、支出を伴わない費用のためキャッシュフロー収支では考慮しません。
会計上とキャッシュフローでは、このような違いがあります。
目標とすべき目安となるキャッシュフローはどのくらい?
それではどのくらいのキャッシュを手元に残すことが出来ればよいのでしょうか。
これはオーナーによってもそれぞれ考え方があり、地域特性などの様々な要因が挙げられるため、一様には示すことが出来ませんが、まずはキャッシュフローを年間で黒字になるように設計していくとしてことです。
一般的に広く知られているのは、経費は家賃収入の20%前後と見積り、残りでローンを支払ってどのくらい残したいかを目安にしながら進めていくと、ひとつの指標投資判断の基準にすることができます。
そんなキャッシュフローの健全性や評価の指標として活用できるものがありますので、ご紹介していきます。
キャッシュフローの健全性を確認できるDCR
キャッシュフローの健全性を示す指標として「DCR(債務回収比率)」というものがあります。計算式は以下のとおりです。
DCR = (年間家賃収入-ローン以外の年間経費)÷(年間ローン返済額)
先程の例で計算をしてみましょう。
DCR=(90,000円×12ヶ月 - 18,000円×12ヶ月)÷(59,628円×12ヶ月)=1.207
と計算することが出来ます。
一般に金融機関のローン審査でも活用されており、1.3以上が健全性を示すひとつの基準とされています。また1.2以上なければ審査してくれないという金融機関もあるようです。
キャッシュフロー評価指標として活用できるCCR
不動産投資の効率を示す指標として「CCR(自己資金配当率)」と呼ばれる指標があります。
これは物件に対して使った自己資金に対して、どのくらい効率的に回収できているかを示すものになります。計算式は以下の通りです。
CCR = 年間キャッシュフロー ÷ 自己資金 × 100
最後に100を掛けることで、パーセンテージ表示にしてわかりやすくします。
100%になれば、投資した自己資金が回収できたことになります。したがって、どのくらいの年数で資金が回収できるかを計算することができ、投資判断に繋げることができます。
しかしフルローンなど自己資金が少ない場合には、CCRが高くなる傾向があるものの、ローンの金利リスクが付きまといます。
不動産投資でキャッシュフロー黒字に向けた施策5例
ここからは不動産投資でキャッシュフローの黒字化のためによく利用される選択肢について5つの方法を解説していきます。
ひとえに不動産投資と言っても、物件や土地、オーナーの属性等に応じて最善な選択肢は変わっていきます。
知識を蓄えて選択肢を増やしておくことは、より良い投資判断にも繋がりますので、ご自身の計画に落とし込めるように、しっかりと確認しておきましょう。
購入時の頭金を増やすことで借入を減らす
不動産購入の際に、ローンを使われる方が多いと思います。その際に自己資金で賄う頭金をできるだけ増やすことで、借入金額を引き下げて返済額を減らすことが出来ます。
借入金額を減らすことができれば、借入年数をそのままにして月々の返済額を減らすこともできます。また、借入年数を減らして完済を早める選択肢を取ることも出来ます。
借入条件で、低金利かつ長期の借入期間で毎月の出費を減らす
現在では数多くの金融機関が住宅ローンや投資不動産向けのローンなど様々なローン商品を展開しています。
そんな数々のローン商品のなかでもキャッシュフローを軸に置くと、より金利が低く、借入期間を長期に設定できる商品のほうが、毎月の返済額を減らしてキャッシュフロー改善に繋がっていきます。
借り換えや運用方法に合わせたローン選び
ただ単に低金利のローンを借りようとしても、借入の条件が少々厳しいものもあったりしますので、ご自身の返済や運用方法に合わせたローンを選んでいくことが、結果的にキャッシュフローにも影響していきます。
例えば物件価格と諸費用を合わせたすべての金額を自己資金ではなく、借入で賄うフルローンは、自己資金を入れて借り入れるよりも求められる条件のレベルが上がったり、金利が高くなる傾向にあります。
また続々と新しいローン商品が出てきたり、将来景気変動によって金利が好転したときには、借り換えローンを利用するのも選択肢のひとつです。
キャッシュフローをプラスにしやすいのは新築よりも中古物件
新築は家賃収入も高くなりやすいですが、当然に取得価格も中古に比べて高額になりがちです。ローンの組み方によっては、あまり手元に資金が手元に残りにくい状況になりやすくなります。
その点、中古物件の方がキャッシュフローの面では有利に働きやすくなります。また、建物構造も組み合わせて減価償却も考慮に入れていくと、よりキャッシュフローに良い影響を与えます。
一方で、中古物件の場合には耐用年数までしかローンを組めないという商品が多くあります。そのためローン商品に設定されている最大借入年数を使い切れない可能性もあります。
家賃収入改善や入居率改善を図れる管理会社を見つける
不動産を運営していく上で、空室率を減らし、家賃を出来る限り下げない努力が必要になります。
どうしても家賃を下げてでも空室を埋めてしまいたくなる気持ちも分かりますし、その方が良い判断となることもあります。
ただし家賃収入を下げてしまえば、キャッシュフローへの影響は必至です。
設備を新しいものに変えたり、管理会社を入れて空室率を改善するなど家賃を下げる以外にも打てる手があります。
管理会社を入れる場合には、管理会社の評判・実績はピンきりなので、入居率改善に実績のある管理会社を選ぶようにしていきましょう
黒字になったキャッシュフローをどう活用していくか
黒字になったキャッシュフローをご自身の生活費やプライベートに使うことも悪くはないのですが、せっかくならば不動産投資のために有効に活用していきたいですよね。
ここまで見据えて設計することが出来れば、少なくとも当初よりも不動産投資に関するリスクを理解しながら、運用を進めていくことが出来ます。
活用①:設備等の修繕・改善費用に充てる
不動産を使用していけば、必ずどこかで設備に不良が出てしまいます。このままでは新たな入居者を迎えにくくなりますので、交換や修繕をしていかなければなりません。
保険で対応することも出来るのですが、保険金の支払いは即金性が低く、ある程度時間が経ってから入金されるケースがあるので、そのためにもキャッシュを持っておくことが重要になります。
出来ることなら、他の事業や収入源のなかから持ち出して払うのではなく、不動産の事業の中で生まれたキャッシュフローでやりくりしていくことを意識すると、運用上も健全に進めていくことが出来ます。
活用②:ローンの繰り上げ返済でリスクヘッジ
不動産投資に関わる支払の中でも気になるのはローンの返済についてです。返済が滞ってしまうと信用情報にも関わっていくので、なるべく無理なく返済していくことがベストになります。
そこで黒字になったキャッシュフローを生かして繰り上げて返済していくことや返済資金をストックしておくことも、将来のリスクに対応していくために有効な活用方法になります。
例えば将来、空室が長引いてしまい、家賃収入が無い中で返済をしていかなければならなくなるかもしれません。また今後金利が上昇することで返済額が増額してしまう恐れもあります。
このようなリスクに対応していくためにも、繰り上げ返済や返済資金のストックに活用していく選択肢も持っておくと良いでしょう。
活用③:空室リスクに備えた資金準備
不動産投資において最も避けたいのが入居者が決まらずに、空室期間が長引くことです。
収入がない中で、ローンの返済や税金の支払いをしていかないといけないと考えると、「このくらいは空室になっても問題ない期間」を設定して、そのための資金を準備していくことも大切なリスクヘッジになります。
将来のリスクに対する活用方法が多くなりましたが、これからのことを予想は出来ても、それがいつどのような形でリスクが顕在化するかは誰にも分かりません。
思わぬことが起きてしまっても対応できるような体制を整えていくことが、経営において非常に重要な要素のひとつであり、事業をしていく上で念頭に置いておかないといけないことなのです。
キャッシュフローを重視することで、不動産投資も安定感が増してくる
今回は不動産投資におけるキャッシュフローの重要性と、キャッシュフローを黒字にしていく選択肢とその活用方法について解説してまいりました。
今回の記事を通じて会計上の収支も大事ですが、キャッシュフローに重点を置くことも不動産運用上は非常に大切なことです。
もちろんすべての方にとってキャッシュフローが最優先とは言い切れませんが、数多くの指標を知っておくことで、より最善な投資判断に繋げることができます。
不動産に限らず事業を進めていく上で、様々な視点が必要になりますので、キャッシュフローに限らずに様々な知識を当サイトの記事から吸収し、円滑な運用をしていきましょう。