コロナ禍にもかかわらず、好況な不動産市場 住宅需要や不動産投資が活況な理由とは…

ニュースのポイント

  1. 新型コロナウイルスの感染拡大で足元の経済は低迷が続く中、首都圏の住宅市場は活況を呈している
  2. 住宅需要を後押ししている要因が最低水準の住宅ローン金利と、住宅ローンの減税だ
  3. 不動産バブルと呼ぶ声もあるものの、不動産価格はしばらく高原状態が続く見通し

リーマンショック後の大崩れを回避

新型コロナウイルス感染拡大に歯止めがかからない中、中古マンション価格が7カ月連続で上昇するなど首都圏の住宅市場は活況の様相を見せている。コロナ禍で日本経済は低迷。インバウンド(訪日外国人客)需要が消えた宿泊施設や商業施設は苦境に立たされているが、海外の機関投資家などは東京の不動産市場を投資先に選ぶ動きが盛んになっている。テレワーク(在宅勤務)の普及で落ち込むとみられた都心部のオフィス市場も、「リーマン・ショック」後のような大崩れは回避しているという。コロナ禍の不動産市場で今、何が起きているのかー。

「プロも個人も投げ売りを期待していましたが、不動産価格は高止まりしています。値下がりを期待していた人にとっては、その期待が淡いものだったことが明らかになりました」

不動産市場や金利・為替市場に詳しいニッセイ基礎研究所の准主任研究員の佐久間誠さんは、こう指摘する。最初の緊急事態宣言が発令された昨年4月以降、不況が深刻化すれば不動産価格は下落し、ローンの返済資金調達などのために物件を投げ売りする個人や事業者が相次ぐとの観測もみられた。しかし、こうした予想に反して住宅の売れ行きは好調に推移。世相を反映し、勉強や仕事に使えるリモート環境の整った共用スペースを備えた大規模マンションも人気を集める。

不動産会社などでつくる東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が今月15日に公表した統計によると、2020年12月の中古マンションの成約件数は、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で2533件。3カ月ぶりに前年同月を下回ったものの、成約価格は5.3%上昇の3739万円となり、7カ月連続で前年同月を上回った。成約件数も東京都区部と多摩は8カ月連続、郊外の横浜市や川崎市、埼玉県では7カ月連続で前年同月を上回っている。

中古市場も好調だ。中古戸建て住宅の成約件数も1092件と前年比で9.3%増加し、6カ月連続で前年同月を上回る。成約価格は3448万円。こちらは前年比プラス10.7%の2ケタ上昇だ。東日本レインズの担当者は「現場の話を聞きますと、紹介物件が少なくなっているのに購入の需要が旺盛で、単純に需給の関係が価格上昇の要因になっています」と話す。

人生最大の買い物である住宅。コロナ禍はいまだ先が見通せない状況で、「買い控え」という流れになるかと思えば、さにあらず。政府が実施する大規模な量的金融緩和政策も追い風になっている。  

佐久間さんは「今後も数年間は超緩和的な金融環境が続くとみられ、『コロナバブル』との指摘もあります。東京五輪後にマンション価格が暴落するのではないかとの見方もありましたが、それほど値下がりすることはないとみています。金融環境を左右するのは世界の主要中央銀行の今後の振る舞いですが、小幅な調整はあったとしても、近々に金融政策の正常化に向けた大幅な動きを想定するのは難しいためです」との見解を示している。

金利は現在が底という意見も

民間金融機関の住宅ローン金利推移。固定金利、変動金利ともに過去最低水準であることがわかる。引用元:flat35.

「賃料収入で言えば、不動産市場でコロナの影響を受けた順に、ホテル、商業施設、オフィス、賃貸住宅、物流施設となります。人の流れが止まったことでホテルや商業施設が最もダメージを受けています」

コロナ禍では法人需要を中心に賃貸需要に影響が出ているが、住宅の購入熱は日に日に強まっている。住宅需要を後押ししている要因が、過去最低水準の住宅ローン金利と、住宅ローンの減税などの支援策だ。金融機関の利下げ競争は過熱しており、ネット銀行には変動金利0.38%という超低水準の金利もある。住宅ローンを組みやすい環境にあることは確かといえる。

住宅ローン減税は所得が3000万円以下の人が対象で、年末時点のローン残高の1%が所得税から10年間控除される。消費税増税対策として3年間長く控除を受けられる特例措置が講じられていたが、2021年度税制改正大綱では、コロナ禍を踏まえ特例の延長が目玉施策として盛り込まれた。

物件を購入すれば住宅ローンの返済額が毎月の賃貸料よりも安くなる現象も発生している。さらに、住宅ローンで変動金利型を選択すれば、住宅ローン減税の控除額を下回ることにもなる。あくまで現時点で数字だけを比較すれば、ローンを組むことでむしろ利益が出ているともいえるのだ。

税制改正大綱では、住宅ローン減税を受けるための面積要件も緩和されることになった。現在は床面積50平方メートル以上というのが要件だが、独身や「DINKS」といわれる共働きで子供を持たない夫婦の家庭も増えていることから、価値観の多様化を反映して40平方メートル以上となったのだ。都心部などの40平方メートル前後の物件の購入を考えていた人にとっては朗報で、「控除の対象に50平方メートル未満の1LDKの物件も入ってきますので、これまでよりも幅広い層が恩恵を受けることになります」(佐久間さん)。

ただ、超低金利環境下で1%の控除額がローン金利を上回り、利益が出る「逆ザヤ」が生じている問題については改めて議論するとしており、控除額の基準については、今後見直される可能性もある。佐久間さんは「住宅ローン金利が今後、大幅に下がる可能性は低く、金利主導の不動産価格上昇は見込めません。富裕層向けの『億ション』は別ですが、数千万円台のマンションの価格は高原状態にあるといえます」と分析する。こうした状況から、“今”が住宅購入の好機ととらえている人も少なくない。

郊外化、地方化は進まず

コロナ禍でテレワークが一気に普及。昨年はいわゆる“住みたい街”の勢力図にも異変が起きている。不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」(ライフルホームズ)の「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング(首都圏版)」で1位に躍り出たのは都心から電車約1時間の「本厚木」(神奈川県厚木市)。テレワークによって通勤から解放されたことで都心を“脱出”し、子育ての環境が整った自然豊かな街が脚光を浴びているとして話題になった。しかし、佐久間さんは「郊外化」が進むとの見方には懐疑的な視線を見せる。

「テレワークの普及によって通勤のデメリットがなくなり、郊外の需要はどちらかと言えば増えるでしょうが、マジョリティー(多数者)はそこまで大きく変わらないと思います。在宅勤務で仕事を完結できる人は少なく、オフィスまで通勤したり、自宅で働いたりという『ハイブリッド』な働き方になるとみられます。多くのサラリーマンは月に何度か、週に何度かは少なくともオフィスに行かなければいけません。これから本格的な人口減少を迎える中、長期のトレンドでは郊外化、地方化が進む可能性は低いと考えられます」

出社しない完全なリモートワークが浸透すれば、別荘地の長野県軽井沢町に定住するという人や、あるいは沖縄のリゾート地に移住したと考える人も出てくるだろう。ワークとバケーションを組み合わせた「ワーケーション」も注目を集めている。だが、佐久間さんは「移住してみたいというのと、実際に移住するというのは違い、意欲・関心と行動との間には大きなハードルがあります。コロナ禍ではテレワークのデメリットも指摘されはじめ、社員が集まれるオフィスの重要性も改めて認識されています」と指摘する。実際、それほど目立った郊外への人口移動も起きていないという。

サラリーマンにとって、テレワークの普及で通勤がなくなったのは大きなメリットだが、他方で、社内でのコミュニケーション、新入社員らのOJT(職場内訓練)、企業文化の醸成といった面では課題もあるという。

「今回のテレワークの広がりを壮大な社会実験ととらえれば、OJTはやはりオフィスで行った方がよく、ビデオ会議で言語情報、視覚情報は送れますが、場を、空気を共有しなければ伝わらない情報も依然として多くあります。生産性を測ることは難しいですが、平均すると、テレワークによって生産性は下がっているとみられます」

主要機能を地方に移転させる方針を打ち出す企業も相次いでいるが、オフィスが集まる東京・大手町、丸の内やIT企業が集まる渋谷の需要は下がらず、「都心部のオフィス需要は短中期的にはマイナス圧力もあるかもしれませんが、地方や郊外移転に業務上のメリットや強い思いがある会社でない限り、地方化、郊外化は進まないとみられます」(佐久間さん)。オフィス面積の縮小につながる「構造的な変化」も、どの程度のものになるのか分からないのが現状だ。

海外投資家からの注目が集まる

日本経済はコロナ禍で深刻な打撃を受けており、特に活況を呈する東京の不動産市場に対しては「不動産バブル」「局地バブル」との声もあるが、不動産価格はしばらく「高原状態」が続くというのが佐久間さんの分析だ。

気になるのは、機関投資家の動き。不動産サービス大手、ジョーンズラングラサール(JLL)の調査によると、東京の商業用不動産投資額は2020年1~9月期で193億ドル(約2兆円)。前年同期の4位から一気に首位に躍り出た。3四半期を通じて東京が首位となるのは、2008年のリーマン・ショック以降では初というのも特筆事項に上がる。インターネット販売の伸長などを背景に、物流施設や賃貸マンションの稼働率は安定していることから、機関投資家の目に魅力的な市場と映っているようだ。

佐久間さんは「海外の投資家の間では以前から、アジアの不動産に投資したいというニーズがありました。その場合、まず対象に上がるのが、不動産市場が成熟し、政治や経済も安定している日本とオーストラリアです。投資家はポートフォリオ(金融資産の組み合わせ)で運用しています。投資先の不動産の割合を増やす必要があり、コロナ後も比較的安定している日本に資金が流入したのです。幸いだったのは、金融市場の流動性が保たれたことです」と指摘している。

コロナ禍の不動産市場
新型コロナウイルスの影響でオフィスの空室率が上昇したものの、都心や都市部から郊外・地方への目立った人口移動は起きておらず、大都市の住宅市場は好調の傾向を見せる。東日本不動産流通機構の調査では、10月の首都圏の中古マンションの成約件数は3636件と、前年同月比31.2%増。10月としては1990年の統計開始以降、過去最高の水準を記録した。首都圏の新築マンションの販売も大幅に回復しており、不動産経済研究所によると、10月の発売戸数は、前年同月比67.3%増の3358戸で、価格も上昇している。参考:47NEWS
2021年度税制改正大綱
与党は2021年度税制改正大綱を決定し、デジタル・グリーン関連投資への設備投資減税や住宅ローン減税の延長などが盛り込まれた。コロナ禍の景気影響を緩和するための減税措置に当たる住宅ローン減税は、2019年10月から措置されている控除期間の特例措置の入居制限を当初の2020年末から2022年末へと延長するもの。この減税措置では、対象となる住居の面積の要件を50平米以上から40平米以上に緩和する措置も実施する。参考:Economics Trends

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