【投資家向け】実質0円で上場企業が買える?時価総額と現金残高が矛盾してる会社11選(50億〜100億)

さて、これまで時価総額50億円以下で、「実質0円で買うことができる上場企業」を紹介しましたが、今回は、もう少し規模を大きくして、50億円~100億円以下で調べました。

時価総額が大きくなると、条件を満たす上で必要な現金も巨額になりますのでハードルが高くなりそうですが、この範囲でも複数の「実質0円で買うことができる企業」がみつかりました。

時価総額を大きくしたことで、金融や鉱業など、いかにも企業の規模が多いイメージのある業種の企業も見られるようになりました。また東証一部上場企業が増えてきたのも特徴的です。

地方銀行

時価総額が50億円以上になってくると、小規模の地方銀行が該当するようになってきます。一般的にはもっと規模が大きいイメージがあると思いますが、そのイメージの通り、総資産でみれば時価総額よりはるかに規模が大きいことが多いです。

しかしながら、株価が低水準にあることにより、時価総額がしぼんでしまったため、50億円〜100億円の範囲では該当する地銀が複数ありました。

地方銀行はそもそもお金を取扱うビジネスであることから、時価総額より圧倒的に多額の現金を保有しておりますので、実は今回の記事にとても適した業種です。

 

高知銀行

高知銀行の足元の状況

経常収益 経常利益 純利益 時価総額 現金預け金
120億円 14億円 12億円 79億円 1676億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

 

  • 時価総額79億円に対し、直近決算(2020年9月)で1676億円の現金預け金
  • 高知県の第二地銀で、高知県を中心に四国全域に支店を持つ
  • 低金利の最中に高い定期預金金利のキャンペーンを行っていることで話題に

最初に紹介するのはその名の通り高知県を中心にビジネス展開する高知銀行です。東証一部に上場している第二地方銀行です。

金融機関は一般的な企業の財務諸表と項目が異なりますが、現金預け金が実質的な現金になります。高知銀行の場合は、何と時価総額79億円に対し、1676億円の現金を保有しております。

厳密に考えると地方銀行を始め金融機関は一定額を日本の中央銀行である日本銀行に預ける必要があります。そのため、例え買収したとしても全ての現金預け金が「手に入る」とは言えませんが、それを加味しても、時価総額より圧倒的に大きな金額が手に入ることになります。

細かい数字の話になりますが、実際に手に入れられる現金を把握するうえで重要なので、高知銀行の分については詳細を確認します。

高知銀行の預金残高は1兆円強です。尚これは「高知銀行に預け入れられているお金」なので、買収すると手に入る「高知銀行が他の銀行や日本銀行に預けている現金預け金」とは異なります。この預金規模の場合は日本銀行に預けなければならない金額は大体1%強です。

したがって日本銀行に預けなければならない金額は1兆円×1%=100億円ですから、保守的にみても200億円を超えることはないでしょう。従って1676億円のうち、保守的に200億円は日本銀行に残しておかなければならないとしても、尚1400億円以上が買収すれば手に入る、ということになります。

このあと地方銀行をあと2行紹介しますが、いずれの地方銀行も「日本銀行に預けなければならない分を考慮しても、実質ゼロ円で買える」ことを確認の上紹介しています。

高知銀行は地方銀行の中でもとりわけ総資産と時価総額の差が大きく、総資産は直近決算時点で、約1.2兆円あります。

これほどに差が付いているのは、高知銀行や、高知銀行が本拠地としている高知県の経済が不安視されているからに他なりません。高知県は日本の中でもとりわけ過疎化が進むリスクが高いとみられている県で、2040年の人口は2010年対比30%減の54万人まで減少するとの試算も出ています。

これだけ見ると少し不安になりますが、高知銀行自体は決して危機的状況にある銀行ではありません。むしろ、足元は新型コロナウイルスの影響、低金利などが逆風となり2020年4-6月などは全国約60%の地方銀行が赤字や大幅な減益となっていましたが、高知銀行は同決算が増益となるなど、堅実な経営を行なっております。

また、高知銀行は最近、とあるトピックで話題になりました。それは「定期預金金利の高さ」です。日本ではいわゆるゼロ金利やらマイナス金利やらが導入されて以降、たとえ定期預金でもほとんど金利がつかない時代となっておりますが、高知銀行のネット口座「高知銀行よさこいおきゃく支店」1年定期預金のキャンペーン金利は10月まで何と0.25%でした。これは一時はお隣の愛媛銀行に続く、銀行第2位だったそうです。

現在はこのキャンペーンは終わりましたが、尚も1年定期預金0.2%という高利率です。ネット口座なら東京なども含む、周囲に支店がない人の預金も取り込むことができます。県内からの預け入れが今後減るリスクもある中、高知銀行は積極的に他地域からの預金取り込みを狙っているのです。

参照:https://www.kochi-bank.co.jp/disclosure/tansin.html

 

南日本銀行

南日本銀行の足元の状況

経常収益 経常利益 純利益 時価総額 現金預け金
81億円 13億円 11億円 59億円 1812億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

 

  • 時価総額59億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で1812億円の現金預け金
  • 鹿児島県をビジネス領域とする福岡証券取引所単独上場企業
  • 住宅ローン、カードローン、SBI証券との提携など積極的なビジネスの多様化を模索

南日本銀行は鹿児島県に本店を構える第二地方銀行です。福岡証券取引所にのみ上場している企業です。時価総額59億円に対して、1812億円の現金預け金を保有しております。ここからは細かい計算は省略しますが、日本銀行への預け金を踏まえて少なく見積もっても、買収すれば1500億円以上の現金は手に入ります。

南日本銀行の総資産は8600億円あまりなので、地銀の規模としても先の高知銀行よりは小さいと言えます。本拠地の鹿児島県もやはり人口減少が予測されており、2040年までに2010年対比20%程度減の約131万人に減ると推計されております。予想される減少幅は大きくは見えますが、実は地方県としてはまだマイルドな方です。その上、県庁所在地であり本店所在地の鹿児島市が60万人近い人口をかかえる大都市であることも踏まえると、南日本銀行のビジネス環境は、地方銀行としてはまだ恵まれた方といえます。

その上、南日本銀行は伝統的な銀行業以外のビジネスも積極的に展開しております。例えばスマホからでも簡単に申し込めるカードローンのWAZZECA(ワゼッカ)や、完済年齢82歳、借り入れ開始が54歳までとかなり高齢まで借りられる住宅ローンなど、ローン事業で積極的にビジネスを行なっております。また、低金利の時代に対応するため、SBI証券との仲介を行うことで、投資家をもビジネスに取り込もうとしております。

他の地銀同様、総資産に比して時価総額が小さくなっておりますが、こうした取り組みにより粘り強くビジネスを継続していくものと期待されます。

参照:https://nangin.jp/ir/closing_publish/post_9.html

 

大東銀行

大東銀行の足元の状況

経常収益 経常利益 純利益 時価総額 現金預け金
66億円 9億円 6億円 78億円 1752億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

 

  • 時価総額78億円に対して、直近決算(2020年9月)で1752億円の現金を保有
  • 福島県郡山市に本店を置く第二地方銀行
  • 東日本大震災の時には積極的に企業への支援を実施

続いては福島市の第二地方銀行、大東銀行で、東証一部に上場しています。時価総額は直近78億円で、現金預け金は1752億円でした。大東銀行に預けられている預金残高は、譲渡性預金を含めても8000億円程度であることから計算すると、日本銀行に預けなければならない現金を引いても、買収すると1500〜1600億円程度の現金が手に入る計算になります。

受け入れている預金量は8000億円程度ということなので、こちらも地方銀行としては規模はあまり大きい方ではありません。福島県は人口が2040年に150万人程度と、2010年から25%ほど減少する推計を行なっております。

減少幅は地方としては中程度ですが、2010年の人口が200万人ほどここまで出てきた県では最も多く、また県内に郡山、いわき、福島と地方としては大きな都市が複数あることや、新幹線や高速道路で都心と、東北の大都市である仙台双方のまでのアクセスが東北の中では良いことなどを踏まえれば、まだ日本の中では恵まれた経済環境と言えます。

一方で、この地域の地方銀行には東邦銀行があります。こちらは規模の大きい第一地方銀行ですが、大東銀行の7倍超となる6兆円程の預金および譲渡性預金を受け入れていて、福島県のみならず東北の地銀としても知名度が高いといえます。従って大東銀行としてはライバルである東邦銀行に対する競争力の確保が今後の課題となっております。

大東銀行は古くから地元福島の取引企業とのコミュニケーションを大事にしています。特に東日本大震災の時には、返済期間の長いローンの貸付などを行うことにより、地元企業を積極的に下支えしました。規模が小さい分、東邦銀行より福島県に店舗を集中させていることからも、福島県に密着した地方銀行といえます。

参照:https://www.daitobank.co.jp/investor/library/zaimu/04/

 

素材関連の企業

素材関連の企業としてはいわゆる製品自体を生産する製造業と、生産者と需要者を繋ぐ商社がみつかりました。30億円〜50億円の範囲で紹介した際にも素材関連の企業は出てきましたが、今回はよりスケールが大きい企業が並びます。

製造サイドでは大規模な設備が必要になる「ガラス」の製造企業、商社サイドでは鉱業においてきわめて重要度の高い素材である「鉄鋼」を取り扱う企業が該当しました。

時価総額の範囲を大きくすることで、より大規模な設備やネットワークを持った企業が該当するようになったようです。

 

日本山村硝子

日本山村硝子の足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金及び預金
284億円 -16億円 -25億円 95億円 110億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

 

  • 時価総額95億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で110億円
  • ガラス瓶、プラスチック容器の製造・販売が主要ビジネス
  • ガラス製品生産プラントや派生工業製品の開発・生産などビジネスの積極的な横展開も行う

日本山村硝子は第一次世界大戦が始まった1914年創業のガラス容器の老舗企業です。東証一部に上場しております。時価総額95億円に対して110億円の現金を保有しておりますので、今買収すれば15億円程の現金が手に入る計算になります。

時価総額50億円以上となると日本では有名企業の証である東証第一部上場企業が増えてきますが、その中でも日本山村硝子は総資産1000億円を超える大企業です。本記事のメイントピックである現金が手に入ることももちろんポイントですが、95億円で総資産1000億規模の製造業のオーナーになれるという点でも注目です。

この企業はもともとはガラス瓶の生産からスタートしております。企業の黎明期〜発展期にかけては飲食物などを中心にガラスを使用した容器が主流でしたので、そのなかで発展した行った企業です。やがて割れないプラスチックの容器のニーズが高まったため、日本山村硝子もプラスチック容器の製造に乗り出しています。

現在はガラス容器ビジネスは基本的に縮小が進んでおり、プラスチック容器は特にペットボトルなどのふたを生産しているため飲料需要に左右されるようです。そのため意外にも暖冬、冷夏などの天候にも影響を受けやすいようですが、長い目で見ればプラスチック容器のビジネスは安定的といえます。

また、日本山村硝子は関連ビジネスの展開にも積極的です。昭和末期からガラス素材を応用した工業部品や薬品の生産を「ニューガラス事業」として行なっており、すでに安定したビジネスとなっております。そのほかでは、より小さい企業などに対し、ガラス製品の生産のコンサルティングやガラス製品を製造するためのプラント(大型機械)の販売や設置なども行なっております。これら関連ビジネスも、日本山村硝子の経営の安定に役立っています。

参照 :https://www.yamamura.co.jp/ir/financial_result.php

 

カノークス

カノークスの足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金及び預金
470億円 0.85億円 0.66億円 69億円 93億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

 

  • 時価総額69億円に対して、直近決算(2020年9月時点)で93億円の現金を保有
  • 鉄鋼の専門商社で、創業1897年と120年以上の歴史を有する
  • 国内外で長年鉄鋼の取引を行うことで、日本の鉄鋼業の発展を支える

カノークスは名証二部に上場している鉄鋼関連の専門商社です。時価総額69億円にたいして、93億円もの現金を保有しておりますので、いま買収すると24億円もの現金が手に入る計算になります。

カノークスは創業1897年で、実に120年余りの長い歴史を持っています。もともと黎明期には鉄鋼の板を専門に仕入れる問屋でした。当時は日本国内ではまだ良質な鉄鋼が生産できておらず、専ら海外から輸入して国内の工場などに販売しておりました。しかし戦後には日本の技術力が急速に向上する中では、今度は逆に日本の鉄鋼素材を海外に輸出するビジネスも展開しました。カノークスのビジネスは、鉄鋼メーカーが販路を見出す手助けをすることで、日本の鉄鋼業の発展にも大きく貢献したといえます。

その後現代にかけては為替市場の値動きに応じて海外への輸出、日本国内への輸入を臨機応変で行うことで、現代に至るまで鉄鋼需給のバランスを安定化させてきました。また、近年では単純な鉄鋼だけではなく、ステンレス、メッキなどの合金や、一部非金属の素材商社ビジネスも行うなど、鉄鋼に集中することのビジネスリスクを緩和させています。

参照:http://www.canox.co.jp/

 

日本のくらしを影で支える企業

50億円以上の時価総額になると、相応に大規模化した企業も多くなり、実は日本で人々が暮らしていく上で無くてはならない存在に成長している企業も複数あります。

今回紹介する海運・陸運は、日本対海外、もしくは日本国内の主要都市間の物流ネットワークの一端を担っています。また、もう一社は日本の「食」の安定に、農業用飼料の生産という形で大きな貢献をしております。

普段これらの企業の存在感を実感する機会は少ないかもしれませんが、実は日本の暮らしを陰で支えている、そんな企業をまとめました。

 

川崎近海汽船

川崎近海汽船の足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金及び預金
182億円 2億円 5億円 70億円 88億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

 

  • 時価総額70億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で88億円の現金を保有
  • 日本内海を中心に近海の海運業をメインビジネスとしている
  • 海運の超大手、川崎汽船の子会社であり、「海運業の中では」安定したビジネス環境

川崎近海汽船は東証二部に上場している海運業の企業です。時価総額70億円に対して、直近決算で88億円の現金を保有しております。今買収すると、約18億円の現金が手に入る計算になります。

近海という名前がついていることからも分かる通り、主に日本国内、および日本の近海の海運を担っております。もともとは国内の主要港間のビジネスが中心でしたが、現在は発展著しい東南アジア圏と日本との取引が増えており、一部はそこから派生する形で北米・豪州の運搬も行なっています。

運搬する商材としては鉱石、石炭や鋼材、木材などが中心です。もちろん日本国内の海運も多なっており、こちらは全国の主要な港間を結んでいて、野菜などの食材や、紙製品が多いです。

さてこの川崎近海汽船ですが、社名やロゴを見てピンときた方も多いかもしれませんが、実は海運大手の川崎汽船の子会社です。完全子会社ではなく出資比率が54%程度で、子会社でありながら上場もしている、いわゆる「親子上場会社」となります。

川崎近海汽船のメインビジネスである海運業は、島国日本にとって、海外との貿易を行う上で欠かせないインフラ機能です。しかしながら、そのビジネスの特性上、どうしても景気の波に対する影響が大きいという特性を持っています。景気が悪くなれば必然と物流量が減る一方、船関連の固定費や燃料費などが巨額のため、双方のバランスを取るのが難しいのです。したがって特に中小の海運企業になると、不況時にはしばしば経営が危ぶまれる事態に陥ってしまいます。

その点、川崎近海汽船は川崎汽船の傘下であることから海運業のなかでは安全性は高いと言えます。海運は日本全体で見れば日本郵船、商船三井、川崎汽船でシェアのほとんどが占められる寡占市場です。時期によって多少の上下はありますが、このシェア構成が変わることは想定されにくく、大手三社やその傘下企業にとっては安定した競合環境となります。

海運業特有の景気の波はやむをえないものの、長い目で見れば、川崎汽船傘下である川崎近海汽船は安泰であると考えられます。

参照:https://www.kawakin.co.jp/ir/summary-of-accounts/

 

岡山県貨物運送

岡山県貨物運送の足元の状況

営業収益 営業利益 純利益 時価総額 現金及び預金
190億円 3億円 3億円 52億円 60億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

 

  • 時価総額52億円に対して、直近決算(2020年9月)で60億円の現金の保有
  • もとは岡山県の運送を中心に行なっていたが、現在は多数の都府県に事業所を持つ
  • 岡山県内の多数の業者が統合してできた歴史から、現在も岡山での知名度は高い

岡山県貨物運送は、東証二部に上場している運送業を営む企業です。時価総額52億円に対して60億円の現金を保有しておりますので、買収した場合には8億円程度の現金が手に入る計算になります。

名前から分かる通り、元々は岡山県内の貨物運送を行なっておりましたが、その後、岡山〜大阪、岡山〜九州と次第に貨物路線を拡大させていきました。昭和44年には東名自動車道を持ちいた対首都圏の高速運送にも乗り出しました。その後もネットワーク領域の拡大を進め、現在では北は栃木、南は熊本まで24都府県に営業所を構えており、日本の陸路による物流ネットワークの一端を担っております。

また、取り扱うサービスについても多様化しており、一般的な貨物運送だけでも混載、貸切、ボックス単位で運送するJit Boxとさまざまなサービスがあります。そのほか運送では医薬品や産業廃棄物の運送なども取り扱っております。足元では引っ越しサービスの発展を進めております。

このように現代では多方面への運送を行なう中堅の総合物流会社に成長しましたが、いまでもあくまで本社は岡山県に置いております。社名も「岡山県」を残しており、地元では「オカケン」の愛称で親しまれています。現在に至っても地元岡山県とのつながりを重視する背景には、岡山県貨物運送の成り立ちが関係しております。

もともと、岡山県貨物運送は岡山県内の79もの中小業者が、岡山県の運送サービスの向上のために結びついて出来上がった企業なのです。ネットワークの拡大も元々は岡山県から県外への運送ネットワークの向上を主目的に進められたものです。今では多様なビジネス展開を行なっておりますが、それでも尚、岡山との結びつきを大切にしている企業です。

参照:https://www.okaken.co.jp/company/ir/library/

 

日和産業

日和産業の足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金及び預金
193億円 3億円 3億円 62億円 98億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

 

  • 時価総額62億円に対して、直近決算(2020年9月)で98億円の現金を保有
  • 家畜用飼料の販売をメインビジネスとしており、日本の食を影で支える存在
  • 食品関連という点では安定度高いが、農家の廃業リスクのコントロールが課題

日和産業は神戸に本社を置く東証二部上場企業です。家畜用の飼料の加工・販売を行なっております。一般的な牛・豚といった家畜の飼料も取り扱っておりますが、日和産業は特に合鴨用の飼料を扱っていることが特徴です。時価総額は62億円に対して、98億円の現金を保有しておりますので、買収すると約36億円の現金が手に入る計算になります。

日和産業は大正13年、西暦1924年創業で、現在の商業用飼料としてはごく一般的な配合飼料(さまざまな原料を混ぜ合わせて、用途にあった成分に加工する飼料)の生産を始めて行なった企業です。

90年以上前から現在に至るまで、農家のニーズにあった飼料の生産に注力している企業です。家畜用飼料ですので、動物がよく食べ、よく太りつつ、肉質は良質なものになることが要求されます。また、食料自給率の低い日本では、家畜の効率的な生産も課題ですので、病気にかかりにくい、家畜を飼っている途中に死なせにくいことにも工夫を凝らしております。

加えて最近になって注目されているのは環境問題で、畜産の場合は動物の排泄物による環境汚染が問題となりがちです。そこで日和産業は排泄物の環境負荷を軽減することも意図して飼料の配合を行なっております。

日和産業のような飼料ビジネスは、大前提として、間接的ではあるものの、人にとって欠かせない食品に関わるビジネスという点では大枠で見れば安定性が高いと言えます。一方で近年課題になっているのは、農家の貸し倒れです。

日本の農家の多くは、借金→飼料など飼育費用の購入→生産して借金を返済→また次の飼育のために借金、というようにいわゆる自転車操業を繰り返しています。従って、例えば災害や病気の蔓延などにより生産が大きく落ち込むとたちまち借金が返せなくなってしまう農家が出てきます。

日和産業が農家に飼料を販売した際も、借金という形で後払いを多く受け入れているようです。近年その一部の農家による貸し倒れの発生が報道されております。しかし、これは予見できたリスクであったことから、日和産業は貸倒引当金(貸し倒れが発生した時のためにあらかじめ確保しておいた資金)を置いてしっかりと対策をしております。ビジネスの特性上、農家の貸し倒れリスクをゼロにすることはできませんが、日和産業では、このリスクをしっかりとコントロールしていると言えます。

参照:http://www.nichiwasangyo.co.jp/docs/ir/result.html

 

特徴的な多角化を進める企業

企業が成長するとき、元々行っていた事業を徐々に拡大させていくのは、もちろんオーソドックスなやり方ですが、一方で、異なる種類の事業を行い、両輪でビジネスを行うことで、規模を成長させる場合もあります。一般的にこれを「多角化」といいます。

特に50億円以上の時価総額ともなると相応の規模になりますので、複数の中規模以上のビジネスを行うことで、この時価総額に到達した企業も少なくありません。

今回はその中でも、特徴的なビジネスの多角化を行っている企業を紹介します。

 

リズム

リズムの足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金及び預金
120億円 -4億円 -20億円 53億円 97億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

 

  • 時価総額53億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で97億円の現金を保有
  • 時計の生産や時計をはじめとした精密機械の部品製造を行なっている
  • 超微細部品から、巨大なカラクリ時計の製造まで行うことが特徴

リズムはさいたま市に本社をもつ東証一部上場企業で、時価総額53億円に対して97億円の現金を保有しております。従って今買収すると、約44億円の現金が手に入る計算となります。時計それ自体や時計の中の微細な部品の製造、そしてそこから派生して精密機械の部品製造を主なビジネスとしております。特徴的な社名は「時計が1秒1秒時間を刻むリズム」ということに由来しているようです。

リズムのホームページを覗くと、個人向けにはアナログ、デジタル双方の多様な時計の生産を行なっており、法人向け製品をみると、精密部品や時計部品といった製品が紹介されております。個人、法人双方とビジネスを展開しているのは、リズムの大きな特徴であり強みであると言えます。大株主には時計メーカの超大手シチズンが筆頭で名を連ねていることから、シチズン向けに部品を生産していることも伺えます。

また、リズムの特徴として「カラクリ時計」の建造というもう一つのビジネスを行っていることが挙げられます。カラクリ時計とはどういうものを指しているかというと、観光地などでシンボルとなっている大きな時計のことです。

ホームページでは過去に実際にリズムが手がけた全国のカラクリ時計の一覧が掲載されております。巨大なものでは10メートルを優に超える巨大なサイズになります。特に北海道留辺蘂町(るべしべ、現在は北見市)にある鳩時計は20メートル長のサイズで「世界一大きい鳩時計」として有名です。

業績を見てみると、ここ3年ほどは売上高の減少がつづいており、特に足元は新型コロナウイルスの影響で赤字決算となっております。純資産が200億円超と潤沢なので、直ちに心配はいりませんが、今後新型コロナウイルスによる景気減速の影響がなくなったときに、しっかりと業績が上向いて行けるかどうかが注目ポイントです。

参照:https://www.rhythm.co.jp/ir/library.html

 

三井松島ホールディングス

三井松島ホールディングスの足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金及び預金
292億円 10億円 15億円 96億円 219億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

 

  • 時価総額96億円に対し、直近決算(2020年9月)時点で219億円もの現金を保有
  • 中核企業は三井松島産業。石炭の採掘業から始まり積極的な多角化を進めている
  • ビジネス環境の変化が著しい業種ながら、粘り強く経営を継続している企業

三井松島ホールディングスは福岡に本社を置く企業で、炭鉱業を中心としながらも現在は多様なビジネスを展開しております。東証1部上場企業で、時価総額も96億円と今回の紹介企業の中では大きく、福岡県内としては大企業に類する企業です。現金は219億円を保有しており、もし買収したら100億円を上回る現金が手に入る計算になります。

三井松島ホールディングスの源流は三井松島産業による石炭採掘ですが、石炭ビジネスは環境の変化がとても大きいビジネスで、三井松島産業もその影響を多大に受けてきました。元は長崎の松島炭鉱に対し三井財閥が出資することで1913年に前身企業が創業されていますが、やがて戦後に入り国内の炭鉱の採掘状況・コスト環境が悪化することにより閉山しました。

この時代は多くの石炭企業が廃業に追い込まれているのですが、三井松島産業は海外の鉱山に目をつけ、海外炭鉱を開発することにより、石炭採掘ビジネスを継続します。現在の三井松島ホールディングス傘下の炭鉱は全て海外の炭鉱です。

さて、海外の炭鉱があれば安泰かと思いきや、これは現在にも続く潮流ですが、エネルギー資源として石炭の地位は急速に低下してきています。石炭はほかのエネルギー源と比較して環境に対する負荷が高いとみなされており、特に欧米を中心に近年は石炭の使用を避ける動きが進んでおります。今すぐ石炭の生産ができなくなる、というほどではないものの、石炭ビジネスが斜陽化しつつあることは否定できません。

しかし、三井松島ホールディングスは積極的な多角化に乗り出していたことにより、現在は石炭ビジネス以外からも一定の利益を上げています。一見本業とは関連性の薄いビジネスに着手しながらもしっかりと黒字を確保しているのは、経営能力を高さを物語っています。

多角化は驚くほど多岐にわたり、電子部品、生活雑貨、衣料品、介護、ペット用品などの部門および傘下の子会社を持っています。また、それぞれも的確に強みを持った企業が並んでおります。

例えば、生活雑貨ではストローの生産を行なっているのですが、近年環境配慮の観点から導入が急速に進む紙ストローの生産をいち早く始めた企業です。また、ペットでも同じく注目を集めている「ヒューマングレードのペットフード」(人が食べようと思えば食べられる素材のみで作られているペットフード)を集中的に生産しております。

数ある業種の中でもとりわけ変化が激しく、逆風の吹く石炭事業に身を置きながら、ビジネス環境の変化を的確に捉え、時代にあった形でビジネスセグメントを再構成している点が、三井松島ホールディングスの特徴と言えます。

参照:https://www.mitsui-matsushima.co.jp/ir/library/results/index.php

 

駒井ハルテック

駒井ハルテックの足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金及び預金
149億円 -0.89億円 1億円 79億円 90億円

時価総額は2020/11/17時点、他の情報は2020/9/30時点

  • 時価総額79億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で90億円の現金を保有
  • 橋梁や高層ビルの鉄骨部分の建築がメインビジネス
  • 風力発電所やソーラー建設など、環境関連の新規ビジネス展開にも期待がかかる

駒井ハルテックは橋梁や高層ビルの鉄骨部分の建造をメインビジネスとしている東証一部上場企業です。時価総額79億円に対して、90億円の現金を保有しておりますので、もし今買収した場合には11億円程の現金を手に入れることができる計算になります。

社会インフラとして欠かせない橋梁の建設では、大規模な橋梁も取り扱っており、東北自動車道の盛岡県にある滝沢南スマートインターチェンジ、九州新幹線の佐賀県部分の橋梁の一部など、交通の大動脈となるような案件も複数受注しております。

ビルの鉄骨の施工でも都心の大規模な再開発の中で建設された超高層ビルに多数関わっています。新宿にある東京都庁や、虎ノ門地区の再開発のシンボルとも言える虎ノ門ヒルズなど、日本でも有数の有名な高層ビルの案件にも関わっています。

このような過去の実績からして駒井ハルテックの競争力は高いことが伺えます。ビルの再開発、橋梁の更新は事実上永続的に発生するものなので、駒井ハルテックの将来性は良好といえます。

また、駒井ハルテックは環境関連の新規ビジネスにも積極的に進出しています。風力発電所やソーラー設備といった再生可能エネルギーの発電施設を建造を多数手がけております。

こうした環境配慮型の発電設備の需要は、環境に対する世界の意識が高まる中で今後伸びていくことが期待されることから、駒井ハルテックの環境ビジネスにも大きな伸びしろがあります。

参照:https://www.komaihaltec.co.jp/ir/data/news.html

まとめ

今回は時価総額50億円~100億円の企業の中で、時価総額より現金保有の方が多い企業を紹介しました。

これまでより規模の大きな企業が際立ってきており、東証一部上場企業も増えました。また、三井松島ホールディングスを始め、複合的なビジネスを展開している企業が見られたのも特徴的でした。企業として成熟期に入り、大規模なビジネス展開や独自のビジネス構成などにより安定的な地位を確立しており、経済変化にも強い企業が増えた印象です。

実際に買収するには、個人としては巨額の資金が必要にはなってきますが、安定した企業を現金付きで手に入れられるというのは魅力的です。

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