【投資家向け】実質0円で上場企業が買える?時価総額と現金残高が矛盾してる会社11選(100億以上)

今回は時価総額100億円以上で「実質ゼロ円で買える企業」を紹介します。

今回は必然的に保有現金が100億円を超えないとこのテーマには該当しないので、最初はなかなか見つからないのではないかと思っていたのですが、意外にもこの規模になっても複数の企業が該当しました。

驚くことに時価総額1000億円を超える企業もありました。これらの企業になると、買収することによって手に入る現金も巨額となります。ぜひ買収をチャレンジしてみたいものです。

地方銀行

時価総額が50億円以上のカテゴリから地方銀行の事例が増えてきましたが、時価総額100億円以上でも複数の地方銀行が該当しました。

大都市を本拠地とする地方銀行などは大規模にビジネスを行なっているため時価総額が相対的に大きいことも多いです。またその中には取り扱う預金量はさらに巨額となっている例もあります。

100億円以上の地方銀行で「実質ゼロ円で買える企業」はたくさんありますが、他の業種も紹介したいので今回も3行だけ紹介します。

千葉興業銀行

千葉興業銀行の足元の状況

経常収益 経常利益 純利益 時価総額 現金預け金
235億円 29億円 23億円 172億円 3251億円

※時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点

  • 時価総額172億円に対し、直近決算(2020年9月)で3251億円の現金預け金を保有
  • 県内に三行の地方銀行がある激戦区、千葉で柔軟なビジネス展開を強みとする
  • 農商工連携という特徴的な取り組みも行う

最初に紹介するのは千葉県の地方銀行で東証第一部に上場している千葉興業銀行です。時価総額172億円に対して、直近決算で、地方銀行の保有している現預金にあたる現金預け金が3251億円に達します。

さて、時価総額50〜100億円で「ゼロ円で買える企業」の記事でも紹介されておりますが、念のためこちらでも、地方銀行の保有する現金について少し補足しておきます。

地方銀行を含む金融機関は一定額を日本銀行に預けておかなければならない決まりがありますので、こちらの現金預け金を全て現金として使用することができるわけではありません。したがってこの記事では、日本銀行に預けておかなければいけない金額を差し引いても充分「ゼロ円で買える企業」に含まれることを確認して紹介しています。

千葉興業銀行の場合は、銀行に預けられている預金(これは買収すると手に入る「千葉興業銀行自身の現金預け金」とは異なります)は直近決算時点で約2.7兆円です。譲渡性預金もありますが、金額がこれと比較すると小さいので無視します。この預金規模の場合、日本銀行に預けなければならない金額はこの預金の1.3%となります。2.7兆円の1%は270億円ですので、保守的に見ても500億円を見ておけば十分です。

つまり保有する現金預け金3251億円のうち、500億円は日本銀行に預けておくとしても、残り2700億円以上は自由に使用できる計算になりますのでこの記事で紹介する「実質ゼロ円で買収できる企業」に含まれるということになります。このあと紹介する地方銀行も、このように日本銀行への預け金を踏まえても「実質ゼロ円で買える」ことは確認の上ご紹介しています。

さて、そんな千葉興業銀行ですが、その名の通り千葉市に本店を置き、千葉県を本拠地とする地方銀行です。実は千葉県は千葉銀行、京葉銀行、そしてこの千葉興業銀行と、県下に3行の地方銀行を有する激戦区です。

そんな環境でも千葉興業銀行が単体でビジネスを継続している背景には、1つは千葉県の人口を背景とした経済力があります。千葉県は東京都に隣り合う県であり、人口は600万人を超える経済力のある県です。県内でも政令指定都市の千葉県を始め、地方であれば有数の大都市といっていいほどの都市がいくつもあります。このような環境ですので、地方銀行としてはビジネス環境が良好であると言えます。

もう1つは千葉興業銀行のフットワークの軽さを背景とした積極的なビジネス展開です。千葉興業銀行は5年ほど前からLINEを活用したサービスの導入を行う、動画コンテンツを配信するなど、地方銀行としては早期からITを活用したサービスやマーケティングを積極的に行ってきました。

また、千葉県には近郊農作物の大産地という側面もあり、農業の発展も無視できない要素です。そこで千葉興業銀行は「農商工連携」という取り組みを積極的に行ってきました。これは、農業・工業・商業が連携し合うことで発展しあい、また将来のビジネス拡大を目指すというもので、千葉興業銀行は金融の立場からこの取り組みを積極的に推進し、農商工連携を促進させております。

このように千葉県という恵まれた経済環境と、自身の経営努力によって、千葉興業銀行は安定的にビジネスを継続しております。

参照:https://www.chibakogyo-bank.co.jp/index.html

山梨中央銀行

山梨中央銀行の足元の状況

経常収益 経常利益 純利益 時価総額 現金預け金
267億円 26億円 13億円 259億円 5420億円

※時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点

  • 時価総額267億円に対して、5420億円の現金預け金
  • 山梨県唯一の地銀で、今回唯一の第一地銀
  • 積極的な協業を行いながら、山梨県の中核金融機関としてビジネスをサポート

山梨中央銀行も東証第一部上場企業で、今回紹介する中では唯一の第一地方銀行です。第一地方銀行とは、その地域を代表する地方銀行であり、一般的にはその地域で最も規模の大きい地銀です。時価総額100億円以上から選別すると、このように規模の大きな地銀が該当するようになってきます。

時価総額267億円に対して、5420億円もの巨額の現金預け金を保有しております。山梨中央銀行に預けられている預金残高は、直近決算で約3.2兆円であることから、日本銀行にはこちらも500億円も預ければ充分ですので、少なくとも4900億円以上の預け金は「保有している現金」と同等とみなして大丈夫です。

さて、山梨中央銀行は、さきほどの千葉興業銀行とは対照的に「県下唯一の地方銀行」です。山梨県にはこの山梨中央銀行しかありません。また、必然的に山梨中央銀行は、一般的に都道府県内で最も大きな地方銀行が含まれる「第一地銀」となります。

一方山梨中央銀行の場合は山梨県の経済基盤の弱さが懸念材料です。現在の山梨県の人口は約81万人と既に関東圏の県などと比較するとかなり人口の少ない県です。また、これが2040年には67万人にまで減るという予測もあります。

とはいえ山梨中央銀行は、山梨県唯一の地方銀行ですから、山梨県のビジネスの維持・発展の観点から重要な存在となっております。山梨中央銀行自身も「山梨県の中核金融機関」と自らを位置付けた上で、安定的な経営の継続を徹底しております。

近年では、周辺の地銀との積極的な業務提携も行うようになってきました。2018年には富士山周辺の観光振興について、横浜銀行・静岡銀行との連携協定を結んでおります。特に隣の静岡銀行とは積極的な連携を行なっており、2020年にはより包括的な業務提携をおこなって、事務コストの削減を進めていくことが発表されています。

このように山梨中央銀行は、他の地方銀行と連携することで、山梨の中核金融機関として金融の立場から山梨県の経済発展をサポートしています。

参照:https://www.yamanashibank.co.jp/

愛知銀行

愛知銀行の足元の状況

経常収益 経常利益 純利益 時価総額 現金預け金
269億円 31億円 22億円 339億円 2034億円

※時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点

  • 時価総額339億円に対して、直近決算(2020年9月)で2034億円の現金を保有
  • 大都市名古屋に本拠地を構える第二地方銀行
  • 地方銀行ながら本格的なインターネットバンキングがスマートフォンで可能

地銀最後は日本を代表する大都市、名古屋を拠点とする第二地方銀行、愛知銀行です。愛知銀行も東証一部上場企業で、これまでより少し規模は大きくなり、時価総額339億円に対して、2034億円の現金預け金を保有しております。

愛知銀行に預けられている預金残高は3兆円余りなので、やはり日本銀行に預ける金額は500億円をみておけば充分です。したがって残りの1500億円以上の部分が、買収した場合に手に入る現金と見ることができます。

さてそんな愛知銀行はいうまでもなく本拠地、愛知県の経済環境は日本全体とすれば良好です。東京、大阪には及ばないとは言え、日本有数の大都市名古屋を核に活発なビジネスが展開されており、愛知銀行のビジネス拡大余地も豊富です。

一方で、そんな経済環境であるがゆえに地銀の競争環境は非常に厳しくなっております。愛知県は県内に第一地銀がなく、第二地方銀行が名古屋銀行、中京銀行、愛知銀行と3つならんでおります。これは千葉県とはまた異なる激戦の形です。そしてそれよりも愛知銀行にとって大変なのが、周辺県に地方としては有名な第一地銀がいくつもあることです。岐阜県の大垣共立銀行、三重県の十六銀行、百五銀行と三重銀行とあり、それらすべてが、手の届く大都市「名古屋」でのビジネス展開を積極的に行っております。そして、それだけではなく日本有数の大都市ということでメガバンク3行も名古屋でのビジネスを重視しております。

このように第一地銀数行+メガバンクと競争していかなければならない愛知銀行の競争環境は非常に厳しいと言えます。

そのようななかで愛知銀行は、名古屋のビジネス中枢である名古屋駅前に大規模な支店を構え、また先の第一地方銀行の本拠地である岐阜や三重の大都市にも大きな支店を構えるなど、これらの地方銀行と積極的に競争を行なっております。

また、サービス面では、地方銀行としては整ったインターネットバンキングサービスを行なっており、名古屋圏外の居住者の預金ニーズも積極的に取り込んでおります。地方銀行でもインターネットバンキング自体はさほど珍しくなくなってきましたが、愛知銀行のインターネットバンキングサービス「愛銀Aiダイレクト」はスマートフォンアプリと連携しております。そしてそのアプリは地方銀行のアプリサービスにありがちな残高確認などが行えるだけでなく、振込・振替・住宅ローンや外貨預金取引など本格的な取引が可能です。

このようにメガバンク並みのインターネットバンキングシステムがスマホアプリで実装しているのは、第二地方銀行としては珍しいと言えます。

参照:https://www.aichibank.co.jp/

 

有名な大手企業

今回の記事では時価総額の条件は「100億円以上」としております。

この規模の企業の中には、日本有数の大企業も多数ありますが、意外にもそうした企業の中にも、現金保有が時価総額より多い「実質ゼロ円で買える企業」がいくつかありました。

いずれも企業規模は大きく、たとえ計算上「実質ゼロ円で買える」といっても、実際に買収するのは簡単ではないかもしれませんが、もしも買収できた場合には、巨額の現金が合わせて手に入れることができるということになります。

青山商事

青山商事の足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金および預金
616億円 -139億円 -169億円 251億円 516億円

※時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点

  • 時価総額251億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で516億円の現金を保有
  • 紳士服販売の大手企業で、全国的に店舗を展開
  • 紳士服の需要減退が業界全体として課題となっており、紳士服以外の収益源を模索

青山商事は東証一部上場企業で、紳士服販売の大手企業です。時価総額は200億円あまりではありますが、一般消費者向けに全国で店舗展開を行なっていることもあり、知名度は高いです。時価総額251億円に対して、516億円の現金を保有しておりますので、もし買収できた場合には160億円強もの巨額な現金が手に入る計算になります。

青山商事はCMも頻繁に流れ、全国にロードサイド型の店舗を多数構えていることから知名度も高く、実際に利用した方も男性のビジネスマンであれば多いかと思います。実は青山商事は「スーツ販売数世界一」ということでギネスブックに認定された実績を持っています。現在でも、日本のスーツ業界のリーディングカンパニーとして業界を牽引しています。

しかし、青山商事は先に示したように赤字決算を出しているなど、経営環境には課題があります。これは青山商事単体の問題というよりはスーツ市場自体の縮小が影響しております。スーツ業界は、近年日本の少子高齢化・人口減少による労働者自体の減少が長期的な逆風となると言われていました。足元はそれに加えてクールビズなどに伴うビジネスウェアのカジュアル化や、新型コロナウイルスによるテレワークの普及に伴うスーツを着る機会の減少などが一気にスーツ業界の需要減少要因として押し寄せています。

青山商事は50%あまりと高い自己資本比率を維持しているため、当面の経営には不安がないと言われておりますが、この間にスーツ依存への脱却や販売手法の多様化が志向されております。商品としては衣料関連ではカバン・靴といった製品の売上向上を進めております。また、これまではスーツ業界全体として、店舗での直接購入が基本となっておりましたが、足元はオンライン販売の強化に乗り出しています。

そのほかでは多角化の一環として飲食店の店舗を経営しております。「焼肉きんぐ」と「ゆず庵」という飲食店のフランチャイズ契約を物語コーポレーションと行い、2つ合わせて全国10数店舗の経営を行なっております。

このようにスーツ依存の脱却や販売方法の革新により青山商事は業績を回復していくことが期待されています。

参照:https://www.aoyama-syouji.co.jp/

 

石油資源開発

石油資源開発の足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金および預金
981億円 -63億円 -70億円 1052億円 1482億円

※時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点

  • 時価総額1052億円に対して1482億円の現金を保有
  • 石油の採掘を行う超大手企業
  • 日本近海の石油採掘を積極的に行う一方、パイプライン輸送に高い技術

石油資源開発は東証一部上場企業で、今回紹介する企業の中では東京電力ホールディングスについで時価総額が大きな企業です。石油の採掘から輸送・販売を行う企業で、時価総額1052億円に対して現金は1482億円を保有しております。従ってもし今買収したら400億円あまりの現金が手に入る計算となります。

石油資源開発は石油の採掘を行う企業としては二番手です。石油会社といえば、国内ではENEOSなどガソリンスタンドがイメージされますが、こうした企業は原油を購入して精製や販売などを行うところをメインビジネスとしております。一方で石油資源開発は石油を油田から採掘する事業を行なっております。この採掘を行う企業としては、トップは国際石油開発帝石で、二番手がこの石油資源開発ということになります。そしてこの石油の「資源開発」に該当する大手企業は実質この二社だけとなります。

石油資源開発は特に日本の油田開発を積極的に行なっており、日本における石油の輸入依存を緩和している企業と言えます。とはいえ、企業の競争力という観点からは国内の油田に頼っていては厳しいので、近年はイラクのガラフ油田など海外の油田開発も行なっております。

尚、石油資源開発は油田の開発だけでなく、輸送パイプライン設備の運営について日本屈指の技術力を持っており、石油資源開発の大きな強みとなっております。この強みを生かして足元はサハリン沖からの天然ガス輸送プロジェクトにも参画しています。

参照:https://www.japex.co.jp/

 

東京電力ホールディングス

東京電力ホールディングスの足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金預け金
2兆8342億円 1814億円 1486億円 4644億円 9534億円

※時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点

  • 時価総額4644億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で9354億円の現金を保有
  • 日本最大の電力会社であり、全業種で見ても有数の大企業
  • 東日本大震災により一時は経営が危ぶまれたが、いまも首都圏の電力供給を担う

東京電力ホールディングスは言うまでもないかもしれませんが、東証一部上場企業です。時価総額は売上規模からすると小さいのですが、それでも4644億円で、これまでのこの「ゼロ円で買える企業」シリーズの中で最大の企業です。その現金はさらに巨額で、9534億円となっており、もし買収した場合は5000億円近い現金が手に入ることになります。

個人が4600億円もの現金を一時的にでも用意すること自体が困難であることから、東京電力ホールディングスの買収はきわめて困難な環境ではありますが、最終的に5000億円近い現金が入ると言われると、何か方法がないかと考えてみたくもなります。

さて、東京電力ホールディングスの時価総額4600億円あまりは、実は東京電力の歴史からすればとても縮小した結果であるといえます。例えば1989年には前身企業に当たる東京電力の時価総額はなんと7兆円以上です。当時の保有現預金は見ることができませんでしたが、おそらく当時は「実質ゼロ円で買える企業」ではなかったと思われます。

そこから時価総額が現在の額まで縮小した背景は、1つは日本のバブルの崩壊による株価の低迷がありますが、東京電力の場合はもう1つの原因があります。それは、2011年東日本大震災に伴う福島原子力発電所の事故です。

これも全国的に多くが報道されておりますので、ここでは東京電力への影響についてのみまとめます。福島原子力発電所がメルトダウンを起こしたことで、周辺住民に対する賠償、福島原子力発電所の廃炉準備、そして基本的に原子力発電より高コストな代替電力の使用による経営圧迫が同時に発生しました。その結果東京電力は2011年の決算で1兆円を超える赤字を出し、経営が危ぶまれたことから実質国有化が行われております。

しかしながら、経営については着実に改善しており、現在は破たん危機からは回復しております。そもそも福島原子力発電所の事故でマイナスなイメージがついたとしても、東京電力は首都圏の日々の電力供給を支えている非常に重要性の高いインフラ企業ですので、この企業がビジネスを止めてしまう自体というのは、日本経済へのインパクトを考えても現実的ではありません。

現在では原子力発電に頼らずにこの莫大な首都圏の電力を賄える体制が整えられ、首都圏では安心して電力を使用することができるようになっております。他の電力会社同様、現在は電力の競争を大手電力会社以外でも促進させようという「電力自由化」のもと、東京電力ホールディングスの下に、発電会社、送配電会社、小売会社が分かれて存在しております。小売会社では首都圏の電力供給だけに甘んじることなく、積極的に他地域への展開を行い、電力販売ビジネスを広げようとしております。

参照:https://www.tepco.co.jp/about/corporateinfo/

 

自動車部品の製造業

時価総額100億円を超えてくると、製造業ではかなり大手企業となります。

製造業の大手となると、それだけ巨大な設備が必要となる傾向にあるため、必然的に設備投資や運転費用が高額となります。

そのためか現金を残しておくことが少ないようで、製造業で時価総額100億円の「ゼロ円で買える企業」は少なくなりました。その中で見つかった1社をここで紹介します。

その1社はこれまでもいくつか紹介されていた自動車部品の製造業でした。これまでと比較して大型の部品を製造し、世界中に生産している企業です。

八千代工業

八千代工業の足元の状況

売上収益 営業利益 純利益 時価総額 現金および預金
699億円 14億円 -6億円 123億円 175億円

※時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点。純利益は「親会社の所有者に帰属する四半期利益」を掲載

  • 時価総額123億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で175億円の現金を保有
  • ホンダ系の自動車部品メーカーとしてサンルーフや燃料タンクを生産
  • 海外売上比率の高さや電気自動車への積極的な対応によりビジネス状況は良好

八千代工業はジャスダックに上場する自動車部品製造業で、基本的にはホンダとの取引が多く「ホンダ系」と位置付けられております。時価総額123億円に対して175億円の現金を保有しており、今買収すると52億円程の現金が手に入る計算になります。

八千代工業はさまざまな自動車部品を生産しておりますが、主力は燃料タンクとサンルーフになっております。燃料タンク、サンルーフ、二輪部品がそれぞれだいたい千代田工業の1/3程度の売上を賄っておりますが、二輪部品は多様な細かい部品の総合であることから、八千代工業としては燃料タンクとサンルーフを主力ビジネスと位置付けて、決算説明資料などでも業績を詳細に説明しております。

さてこの八千代工業は、直近こそ純損失は出しておりますが、新型コロナの影響が色濃く残る中であることを考えると、営業ベースでは14億円の黒字となっているなど、自動車産業の中では、深刻な打撃を回避できたと評価できる企業です。その背景には中国の売上比率が高く、かつ順調に成長していることがあります。新型コロナウイルスはことの発端は中国・武漢ではありましたが、その感染の影響は欧米圏の方が圧倒的に多くなっており、中国はむしろ積極的に正常化を進めています。自動車の生産についてもこの波の中で正常化が進んでいるようで、八千代工業の売上もスピーディに回復しております。

そもそも海外売上比率が80%以上に及ぶこともそうですが、特に今後世界一の経済大国になる可能性も見込まれる成長市場、中国での売上が大きいことは、八千代工業のビジネスにとってポジティブな要因と言えます。

また自動車の進化に対応していることもポイントです。燃料タンクと聞くとガソリン車ではなくなってしまったら生産が衰退するのではないか、と思われがちです。しかし八千代工業はすでにハイブリッド車への対応はもちろん、次世代の燃料電池車向けのエネルギー蓄積装置の生産も行なっており、ガソリン燃料の自動車がなくなったとしてもビジネスを継続できる状態が整っています。

このように八千代工業は積極的な海外展開と製品の進化によって、安定的にビジネスを継続できる企業となっています。

参照:https://www.yachiyo-ind.co.jp/

 

特徴的なビジネスを行うサービス業

製造業の該当企業が減る一方で、一度ビジネスが軌道にのると、さほど設備投資をせずともビジネス規模の拡大が可能なサービス業では多くの企業が該当しました。

先には地方銀行を紹介しましたが、それ以外の金融ビジネスを営む企業が今回は2社当てはまりました。その他にも、マスコミ、アパレルブランドなどの企業が見られ、大規模化するとサービス業の方が、現金が豊富な傾向にあることが伺えました。

中部日本放送

中部日本放送の足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金および預金
126億円 -8億円 -6億円 136億円 142億円

※時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点

  • 時価総額136億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で142億円の現金を保有
  • CBCテレビの放送ビジネスを中心とするマスメディア企業
  • TBS系列で、中日新聞社が系列新聞社

中部日本放送はその名の通り、テレビ局を運営する企業で、東海地域ではテレビ局唯一の名古屋証券取引所第一部上場企業で、かつ珍しい名古屋証券取引所単独上場の企業です。時価総額136億円に対して、現金142億円を保有しておりますので、もし今買収したら6億円の現金が手に入る計算になります。

中部日本放送はCBCテレビという愛知県を中心に視聴できるテレビ局を運営しております。いわゆるTBS系列のテレビ局で、TBSのテレビ番組と、地元のローカル番組を放映しております。

テレビ局というのは新聞社との関係が深い場合が多いですが、中部日本放送の場合もその例外ではなく、もとは中日新聞社の中に設立委員会が設置され、発足したテレビ局です。そのため中日新聞がオーナーの野球チーム中日ドラゴンズとの関係も深く、提携ビジネスやメディアミックスなども盛んに行われています。

現代はテレビ離れやエンターテイメントの多様化などを背景にテレビ業界には逆風環境と話題になりがちですが、実際にはテレビ産業はもともと参入障壁の高さなどを背景に「極端に安泰な産業」でしたので、それが少し「競争が起こりうる産業」に変わっただけであり、他業種と比較して極端に厳しい経営環境となったわけではありません。

中日日本放送の業績も売上300億円台前半でここ5年ほどは安定しております。いわゆるローカル局ではなく、大手のテレビ局の系列局であることからも、マスコミ業界の中では、事業の安定性は高いと考えられます。

参照:https://hicbc.com/

TSI

TSIの足元の状況

売上高 営業利益 純利益 時価総額 現金および預金
562億円 -105億円 -144億円 214億円 315億円

※時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点

  • 時価総額214億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で現金315億円を保有
  • 繊維業というカテゴリに入るがアパレルブランドを多数運営している
  • 中規模ブランドを多数組み合わせることで顧客ニーズに柔軟に合わせていくというビジネス戦略

TSIは東証一部上場企業の繊維業で、いわゆるアパレルと呼ばれる衣料品の販売を行なっている企業です。時価総額214億円に対して315億円の現金を保有しており、もし買収した場合には100億円程の現金が手に入る計算になります。

TSIはアパレル業界の中でも大手でありながらいくつか特徴があります。1つは「中価格帯」のビジネスに集中しているということです。ユニクロのようなファストファッションではなく、かといってアルマーニなどのような高級ブランドでもなく「一般層が使用するが、普段着よりはすこしおしゃれ」な服という位置付けの商品を多数販売しております。

もう1つは「極端なマルチブランド戦略」です。マルチブランドとは1つの企業が複数のブランドを有し、それぞれが独自のコンセプトで運営されるビジネス形態です。ファーストリテイリングがGUとユニクロを同時展開しているように、1つの企業がいくつかブランドを持っていること自体は現代のアパレル業界では珍しいことではありません。

しかし、TSIの独自性の高さはその高さと一つ一つのブランド規模にあります。TSIは現在HPで掲載されているだけでもおよそ60のブランドを持っており、かつ、それぞれが全て中規模のブランドとなっており、中核ブランドを特に設定しておりません。

このビジネス形態の背景に入る前に、足元の中価格帯ブランドの状況を簡単に紹介しておきます。近年はアパレル業界自体が決して順風満帆とはいえません。少子高齢化と若年層の経済力の低下、衣料に対する意識の変化など、需要が縮小していくリスクがいくつもあります。そのなかでも中価格帯ブランドというのは低価格で手に取りやすいファストファッションと、高価格で富裕層などの独自顧客を確保する高級ブランドの間に挟まり最も需要縮小の煽りを受けやすい領域という見方もあります。

こうした難局に対する一つの解決策となっているのがTSIのマルチブランド戦略です。多様化・小口化する顧客のニーズの変化に柔軟に対応できるように、敢えてブランド規模を大きくしすぎず、またコアブランドを持たずに多数のブランドを運営しているのです。これによって多様な顧客ニーズをキャッチできますし、ブランドの立ち上げ・廃止を積極的に行うことで、顧客ニーズの変化にも対応できるようになっています。

参照:https://www.tsi-holdings.com/

東洋証券

東洋証券の足元の状況

営業収益 営業利益 純利益 時価総額 現金および預金
54億円 0億円 3億円 111億円 346億円

時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点

  • 時価総額111億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で現金346億円を保有
  • 中堅の証券会社で投資信託や株・債券の販売を行う
  • 相続や中国株に強みを持ち他社との差別化を行なっている

東洋証券は中堅の証券会社であり、東証一部上場企業です。時価総額111億円に対して346億円の現金を保有しており、もしいま買収した場合は、230億円以上の現金を手に入れられる計算になります。中堅の証券会社は特定の地域を強みとしている場合もありますが、東洋証券の場合は本店は東京ですが、関東以西には各地に支店を有しております。

証券会社のビジネスは、株や投資信託、債券などの証券を投資家に販売することで手数料収入を得るものです。大手になると、投資銀行業と言われるような、M&Aや株・債券などの発行を担うビジネスもあることもありますが、中堅の東洋証券の場合は、個人投資家に対する証券の販売がメインビジネスとなっております。

証券会社はネット証券などによってオンライン取引が拡大しております。これは一つの潮流ではありますが、オンライン取引は証券会社から見ると手数料率が引き下げられることから収益チャンスの減少にもつながっています。

東洋証券はもちろんオンラインでの取引にも対応しておりますが、一方で対面ビジネスでの差別化を行うことで収益性の確保にも注力しております。特に高齢者必然的に絡みやすい資産の相続に着目しており、営業員の大半が相続相談員という資格をもっております。保有している資産の相続は専門家が間に入らないとなかなか素人でできないため、相続に強いというのは他社との差別化になります。また、高齢者が多いということは必然的にオンラインより対面のコミュニケーションが重視されますので、対面ビジネス・収益性の維持にも貢献しております。

販売商品としては中国株に強みを持っており、多くを引き受けて販売しております。中国は近年経済発展が著しい中で、個人の投資ニーズも上昇しており、今後の継続的な収益源と期待されます。

参照:https://www.toyo-sec.co.jp

Jトラスト

Jトラストの足元の状況

営業収益 営業利益 純利益 時価総額 現金および預金
388億円 -12億円 -12億円 245億円 516億円

※時価総額は2020/11/20時点、その他は2020/9/30時点。純利益は「親会社の所有者に帰属する四半期利益」を掲載

  • 時価総額245億円に対して、直近決算(2020年9月)時点で516億円の現金を保有
  • 金融業を中心としつつ多様なビジネス投資を行う投資会社としての一面も
  • 近年ではソーシャルレンディングの普及に貢献

Jトラストは東証第二部に上場している企業で、カテゴリとしては金融業になりますが、旧来の銀行・証券会社とは大きく異なる事業セグメントを持っております。有力ビジネスに積極的に投資することで収益を上げていく投資会社の一面も持っています。

売上としては海外の方が大きく、韓国・モンゴル・東南アジアの金融業が主力となっております。これらの国では銀行業と資産管理会社、消費者向けローンや投資会社などを運営しております。特に東南アジアでは J TRUST ASIAという企業を立ち上げ、積極的なビジネス投資を行なっております。成長著しく、また日本と比較して規制の緩やかな地域で積極的にビジネス展開を行うことで、収益力を高めています。

また、非金融事業にも投資を行なっております。キーホルダーという企業を子会社として持っておりますが、こちらは総合エンターテインメント事業を営んでおります。芸能人のマネジメントや芸能人のマネジメントやテレビ・広告など、マスメディアのコンテンツ制作、ライブ事業など収益性を見ながらエンターテインメント関連の事業は幅広く行なっているのが特徴です。

さて、日本の金融業としても今後成長が見込める領域に集中投資しています。日本では「保証事業」が軸となっておりますが、具体的にはソーシャルレンディングサービスの借り手の債務保証を行なっております。

個人投資家が企業のローンに対し小口投資するソーシャルレンディングですが、利回りを高くする分、いわゆる大手の金融機関の重要顧客などに比して信用力が低い企業のローンなどを取り扱う必要も出てきます。Jトラストはそうした企業の債務保証を行うことで、不渡りを出した際などの投資家保護の役割を担っています。この仕組みはソーシャルレンディングに個人投資家が気軽にチャレンジできるようにすることで、ソーシャルレンディングの普及に貢献しております。

このように、多種多様なビジネス展開、そして収益性・将来性の高い事業への積極的な投資によって、 Jトラストは従来型の金融業とは大きく異なる形で発展しています。

参照:https://www.jt-corp.co.jp/

まとめ

今回は時価総額100億円以上とこれまでより大規模な企業を紹介しました。中には時価総額1000億円以上の超大手企業の中にも、実は実質ゼロ円で買える企業が存在することがわかりました。

規模が大きくなると設備も大規模化する傾向にある製造業などは、この規模になってくると資金に余裕があれば設備投資などを積極化するためか、今回は製造業の該当企業が少なかったです。

一方で、ビジネス規模が大きいからといって必ずしも巨額の設備が必要にならない金融やサービス業の該当企業が増えました。

時価総額100億円以上ともなると一時的で個人で買収資金を用意するのは困難ではありますが、もし成功したら中には手に入れたら、一瞬で億万長者になるような企業もあるので、チャレンジする方法はないか模索してみたくもなります。

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