ESG開示基準の成立に向け、サステナビリティー開示基準の二大勢力が協力 投資家からの批判に反応

ニュースのポイント

  1. サステナビリティーに関する開示基準の二大勢力が、ESG開示基準に成立に向け、組織を統合する方針を明らかに
  2. 統合の背景には、企業向け開示基準の乱立に対する投資家からの批判がある
  3. 英国などで、ESG基準の設定に乗り出す動きがあり、統合を余儀なくされる流れは当面続きそう

サステナビリティー開示基準に関するの二大勢力が、企業向けESG開示基準の成立に向け、統合する方針を発表

SASB ロゴ

引用元:seekvectorlogo.com

米国の持続可能性会計基準機構(SASB)と国際統合報告評議会(IIRC)が25日、乱立が問題視されていた企業向けのESG開示基準の成立に向け、2組織を統合して、新団体「バリュー・リポーティング財団(the Value Reporting Foundation)」を設立する計画を明らかにした。環境や社会、企業統治といった観点を重視したESG投資に関心が集まるなか、二大勢力で協力し、ESG投資の環境を整える狙いだ。

統合の背景にある、非金融資産に関する公開基準の不存在

引用元:FT.com

日経新聞傘下の英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のニューズレター「モラル・マネー」11月25日号で、統合の詳細の明らかになった。同誌によると、
SASBとIIRCの統合は、ESG投資に関する企業向け開示基準の乱立を解決する狙いだという。新団体のトップには、SASBのジャニーン・ギリアト最高責任者が新団体のトップに就任する。

統合には、企業が非金融資産をどのように公開すべきかを規定した統一の基準は存在していないことが背景にある。これにより、投資家が企業別に気候変動リスクやダイバーシティー(多様性)の欠如によるリスクを比較したいと思った場合、様々な調査や企業の自主報告書、関連文書などを自ら集めて、参考にしなくてはならなかった。こうした非効率性は、ESG投資においても、マイナスの影響を及ぼしていたという。

そこで、情報開示の基準として定評のあるSASBと、包括的な情報開示の枠組みとして有名なIIRCが統合することで、情報収集にかかる時間を削減し、投資家の負担軽減を図ることにした。ESG投資を巡る環境構築においても、大きな前進となるという。

SASBの理事会議長のボブ・スティール氏は、「別々のことを行ってきたが、対立していたわけではない」とIIRCとの関係を説明した上で、2組織の統合を通じて、異なった強みを持つ基準が1つになることを歓迎した。「(SASBとIIRCは)体の仕組みでいえば、骨と血管のようなもの。両方あってはじめてうまく機能する」。スティール氏は、米投資銀行ペレラ・ワインバーグ・パートナーズの会長でもあり、統合のメリットを人体に例えながら、そう表現した。

英国のIFRS財団がESG基準の設定に着手 乱立したESG基準統合の流れは当面継続か

SASBとIIRCが統合を検討するようになったのは、9月の出来事がきっかけとなっている。ESG情報の開示基準作りに取り組む5組織が話し合いを持ち、基準の統一化にむけて協力すると発表。この試みには、SASBとIIRC以外に、CDP、CDSB(クライメート・ディスクロージャー・スタンダード・ボード)、GRI(グローバル・リポーティング・イニシアチブ)といった団体も参加している。

スティール氏は、ESG基準を手掛ける組織の統合は、SASBとIIRCだけでは終わらないと洞察する。例えば、CDSBはすでにバリュー・リポーティング財団と統合に向けて交渉を始めたほか、英国に本部を置くIFRS(国際会計基準)財団といった影響力の強い団体もESG基準の設定に着手した。乱立したESG基準が統合を余儀なくされる流れは当面続きそうだ。

ESG開示基準
ESG開示基準は、企業へ投資する基準となるESG情報の開示に関するさまざまなフレームワーク、スタンダード、ガイドラインなどを意味する。企業による適切なESG情報の開示は、金融資本市場の発展に不可欠で、ESG開示基準が果たす役割は大きいとされるが、近年は複数の異なる団体が相次いで独立したESG開示基準を策定しており、企業現場などで混乱が生じている。参考:ニッセイアセットマネジメント
持続可能性会計基準機構
持続可能性会計基準機構(SASB委員会)は、米国海岸に位置するサンフランシスコを拠点とする、非営利の独立基準設定組織である。2011年に設立された。SEC(米証券取引委員会)とコミュニケーションを取り、上場企業と大企業が法的に義務付けられているForm10-K(年次報告書)と、米国に上場している海外企業の法的報告書であるForm20-F(海外企業の年次報告書)の中で、非財務情報公開のための標準化を目指している。参考:一般社団法人日本バルブ工業会
国際統合報告評議会
国際統合報告評議会(IIRC)は、英国で2010年7月に設立された非営利組織。企業の業績などの財務情報だけでなく、環境保全や地域貢献をどれだけしているかといった非財務情報もまとめた情報公開のフレームワークである「統合報告(Integrated reporting)」の開発・促進を行っている。参画組織は多岐に渡り、規制当局や投資家、会計機関、」日本取引所グループなど、世界23カ国の有力企業約90社が参加している。参考:IDEAS FOR GOOD
IFRS財団
IFRS財団は、世界の金融市場に透明性、説明責任、効率性をもたらす国際会計基準(IFRS)を開発することを目的に活動している。IFRS基準と呼ばれる基準書を作成しており、IFRS基準は、公的な説明責任を各所で求められる上場企業や銀行といった金融機関で使用されている。参考:IFRS財団

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