- 2020/12/21
- 資金調達情報
メンタルヘルス関連分野の資金調達が過去最高レベルに 新型コロナウイルスの感染拡大が要因

- 新型コロナウイルスの感染拡大でメンタルヘルスが注目される中、メンタルヘルス分野のスタートアップ企業の資金調達が記録的な水準に到達した
- 調査会社のピッチブックによると、12月10日時点の資金調達額は16億ドル近くで、前年の約2倍だった
- 業界関係者は、現在のメンタルヘルス業界の規模を「氷山の一角」に過ぎず、さらなる成長が見込めると強調
新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、メンタルヘルス関連分野の資金調達が活況
引用元:japan.cnet
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)でメンタルヘルスが注目される中、同分野のスタートアップ企業の資金調達が今年、記録的な高水準に達している。新型コロナを起因とする行動制限で、人々のメンタルヘルスが悪化する反面、企業が人々のメンタルヘルス支援に躍起になっているからだ。大型の資金調達に成功した各企業は、テクノロジーを使ったメンタルヘルスケアを中心に、事業拡大に急いでいる。
新型コロナウイルスの大流行は、世界中で精神衛生上の危機を強めている。リモートワークやオンライン授業の普及が進み、人々の交流が激減。誰もが自宅に籠もり、人との交流がなくなったことで、世界各国でメンタルヘルスの問題が顕在化している。
こうした問題の解決に向け、動き出しているのが、テック系のヘルスケアソリューションの企業だ。既存の事業を拡大させると同時に、新たな製品、サービスの拡充を狙うと、資金調達を急いでいる。
調査会社のピッチブックによると、同分野の世界での資金調達は12月10日時点で、計146件・総額16億ドル近く。前年は111件・8億9300万ドルで、前年比で約2倍となった。10年前はわずか3件・660万ドルだった。
こうしたスタートアップ企業では、企業が顧客となるケースが多く、メンタルヘルスケアの大口需要の獲得が進む。大手経営コンサルティング会社・マッキンゼーが11月に公表したデータによると、企業の52%がメンタルヘルスや死別に関するカウンセリングを提供している。
メンタルヘルス分野はもっと成長する
睡眠とメディテーション(瞑想)のアプリを手掛けるカームは、自社事業の主なけん引役として企業とのパートナーシップを強調した。ピッチブックによると、同社は最近7500万ドルを調達。評価額は20億ドルに到達し、メンタルヘルス分野のスタートアップ企業として最高を記録している。
また、メンタルヘルス関連プラットフォームを運営するモダン・ヘルスは15日、5100万ドルを調達し、評価額が5億ドル超になったと発表した。同社のサービスも企業を通じて提供されている。創業者で最高経営責任者(CEO)のアリソン・ワトソン氏によると、新型コロナのパンデミック以降、顧客数は190社超に倍増した。
ワトソン氏は、企業にとってメンタルヘルスは4本目の柱だと指摘。医療、歯科、眼科関連の手当に加え、メンタルヘルスサービスを提供する企業が増えていることに言及した。
モダン・ヘルスの取締役に加わるロジャー・リー氏(バッテリー・ベンチャーズのゼネラルパートナー)は、業界の現在の規模は「氷山の一角」に過ぎないという。新型コロナウイルスの猛威は今度も続くことから、メンタルヘルス分野の大きな成長を見込んでいることを明らかにした。
同氏は、パンデミックだけでなく、ソーシャルメディアの利用がメンタルヘルスの問題を悪化させているとの認識を示している。
- 新型コロナウイルスのメンタルヘルスケア
- 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、不安や恐怖を抱えながら生活する人が増加傾向にある。政府が要請する外出自粛要請などで、人々の行動が制限され、繋がりの低下が進行。結果として、メンタルヘルスを損なう人が増えているという。参考:筑波大学災害・地域精神医学
- ピッチブック
- ピッチブックは、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトルに拠点を設け、財務データとソフトウェアの作成、開発を主軸に据える企業。パブリックマーケットに関する包括的なデータを提供し、企業や政府の業務や事業計画の推進を後押ししている。参考:PitchBook
- モダン・ヘルス
- モダン・ヘルスは、企業の従業員のメンタルヘルスの改善をゴールに活動する、米サンフランシスコ拠点のスタートアップ。臨床的に検証された評価と、メンバーの好み、経験を利用し、各ユーザーの個別ニーズに対応するほか、エビデンスに基づく予防的ケアと教育に注力している。参考:Modern Health