米金利上昇の影に「コンベクシティ・ヘッジ」 市場は国債売りが売りを呼ぶ状況に戦々恐々

ニュースのポイント

  1. 「コンベクシティ・ヘッジ」と呼ばれる住宅ローン市場の需給要因が、米長期金利の急上昇をもたらしていとの見方が強まっている
  2. 売りが優勢なところに追加の売りが出ることで利回り上昇が増幅される「コンベクシティイベント」は1994年と2003年に発生しており、今回で3度目
  3. 特定の投資家グループによる一段の売りがこの状況を加速させるとの見通しがあり、市場は戦々恐々としている

金利の上昇で保有債券のリスクが上昇


コンベクション・ヘッジの影響を示したグラフ。2021年1月ごろから、急激に上昇していることがわかる 引用元:bloomberg.co.jp

「コンベクシティ・ヘッジ」と呼ばれる住宅ローン市場の需給要因が、米長期金利の急上昇をもたらしていとの見方が強まっている。売りが優勢なところに追加の売りが出ることで利回り上昇が増幅される「コンベクシティイベント」は1994年と2003年に発生しており、今回で3度目。特定の投資家グループによる一段の売りがこの状況を加速させるとの見通しがあり、市場は戦々恐々としている。

コンベクシティ・ヘッジとは、住宅ローン担保証券(MBS)を保有する市場参加者が金利の急変動時に、自身のバランスシートに含まれる資産と負債の償還期限のズレを調整することを意味する。MBSの保有者には、ALM(資産・負債の総合管理)を重視する、米国の住宅金融の中核を担う連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)などが含まれる。金利上昇時には資産を圧縮し、低下時には買い増しながら資産と負債の償還期間を一致させ、金利リスクを調整する管理手法に当たる。コンベクシティ・ヘッジにより、利回りが増幅する「コンベクシティ・イベント」が起きているのが、現在の状況だ。

こうした中、政府も手をこまねている訳ではない。MBS市場での存在感が大きい米連邦準備制度は、金利の安定を目的にヘッジの必要性を最小限に抑えているほか、金融当局は毎月約400億ドル相当のMBSをバランスシートに追加。それでも、大勢のMBS投資家によるポートフォリオ調整の波は、米国債利回りに大きく影響し、資産クラスを越えて波及しかねいとの懸念が広まっている。

JPモルガン・チェースの米金利デリバティブ戦略責任者、ジョシュア・ヤンガー氏は、「金融当局を除く全ての投資家が、いずれはコンベクシティヘッジャーとなる。金利上昇とともに、ポートフォリオのデュレーションが伸び続けているために痛みは増すばかりだ」と強調。モルガン・スタンレーの米金利戦略責任者、グニート・ディングラ氏は、2月25日に約1年ぶりの高水準の1.61%になった10年債利回りの状況を踏まえながら、「コンベクシティヘッジのニーズは全般に10年債利回り1.60%近辺で天井を打つ可能性が高い」としている。

5年債利回りの似たような動きが垣間見える。みずほインターナショナルのマルチ資産戦略責任者、ピーター・チャットウェル氏は、約0.86%に達した後、やや押し戻される利回りの状況を「売り浴びせが単なるリプライシングを超えて、コンベクシティに向かう警告だ」と指摘。米株式やクレジットスプレッドへの向かい風が強まることを示唆するものだと付け加えた。ナスダック100種株価指数は同日、約4%安となる場面もあった。

相場が上がり下がりを繰り返していることから、BNPパリバ証券の井川雄亮金利ストラテジストは、「押し目買いの機会をうかがっている投資家は多い」と分析。コンベクシティ・ヘッジの売りと、押し目買いを狙う投資家の綱引きで神経質な展開が当面の間続きそうだ。

コンベクシティ
コンベクシティは、金利が一定の割合で変化した時、債券価格がどの程度変化するかを表すデュレーションの欠点を補う形で表現した曲線。金利の変動と債券価格の関係を、できる限り実際のものに近づける目的がある。デュレーションは直線だが、コンベクシティは、凸状の曲線となる。参考:野村證券
住宅ローン担保証券
住宅ローン担保証券は、住宅ローンを担保として発行される証券。具体的な仕組みは、住宅ローンの貸し手であるオリジネーターが、住宅ローンを貸し出し、当該の住宅ローン債券を証券発行体に売却する。証券発行体は、これをもとにしてモーゲージ証券を発行する。発行された証券は、元利金支払いの保証などで信用力や格付けを高めた上で、投資家に販売される。米国でのモーゲージ証券は、政府系機関のジニーメイ、ファニーメイ、フレディマックにより発行されている。参考:野村證券

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