コロナ禍により米銀大手4行の貸出先が減少。証券投資に集中するも先行き見えず

ニュースのポイント

  1. コロナの影響で預金増&貸出減。米銀が証券投資に集中している
  2. 貸出で稼ぐ金融ビジネスの性質上、現状が続けば銀行の利益は必ず減少する
  3. 部門売却を図るなど、米各行は事業の立て直しを急いでいる

米大手4行が投資配分を証券投資に集中。約1兆2千億ドルを投資

引用元:アメリカ部

米銀が投資配分を証券投資に集中させている。JPモルガン・チェースなど商業銀大手4行は2020年に入って、証券投資などに約1兆2千億ドル(125兆円)を回した。新型コロナウイルス禍で預金が急増した反面、個人、企業の貸出先が減っているからだ。貸し出しで収益を出しづらい状況は、90年代後半以降の日本の金融機関と重複する。米銀は収益力の低下に直面しており、部門売却など、事業の立て直しを急ピッチで進めている。

米調査会社ファクトセットのデータを基に、JPモルガンとバンク・オブ・アメリカ、ウェルズ・ファーゴ、シティグループの米商業銀大手4行のバランスシートを分析した。各行ごとの国債や住宅ローン担保証券(MBS)への投資、米連邦準備理事会(FRB)などへの預金の総額を割り出した。すると、それらを合計した余資運用額は20年9月末時点で、19年12月末比を27%上回った。

背景には、コロナウイルス流行による急激な預金増加の影響が

背景には、コロナウイルス流行による急激な預金増加の影響が

証券投資が増えた背景には、急激な預金の増加がある。4行合計の預金額は、19年末に比べて9590億ドル増えた。新型コロナの大流行による景気後退で、家計は節約志向を強め、政府からの給付金も消費に回さず、貯蓄した格好だ。企業も手元資金の防衛を図るために、投資の抑制に動いたほか、銀行の融資枠から資金を引き出し、銀行口座に置いた。

このような流れは、伝統的な商業銀行のビジネスモデルに停滞をもたらすものとなる。同モデルにおいては、集まった預金を、比較的利回りの高い企業への貸出金で運用するからだ。貸出金利と預金金利の差である利ざやがもうけの源泉となるが、貸出先が見つからない状況では、必然的に利益が減少する流れが続いてしまう。

実際、足元で貸し出しは減っている。4行合計で貸付金純額は前年末比で1300億ドルの減少。個人は、不動産や車両といったローンの前倒し返済に動いたほか、企業は資金調達を銀行融資から社債発行に切り替えた。銀行は運用難に陥り、証券投資など余資運用を増やさざるを得なくなっている。

米銀の現状は、バブル崩壊後の日本金融業界の姿と重なる

米銀の現状は、金融危機に直面した90年代後半の日本の金融業界に似ている

昨今は商業銀の収益環境は厳しい。貸し出しや証券投資の収益である純資金運用収益は20年7~9月期、4行合計で430億ドルだった。19年10~12月期に比べて13%少ない。融資額減少と利ざや悪化に直面していることが主因だ。バンカメのポール・ドノフリオ最高財務責任者(CFO)は5日のオンライン会合で「顧客が低い金利で借り換えを進めた」と分析し、「証券投資を増やしても、貸付収益の落ち込みを補えない」としている。

こうした状況は、金融危機に直面した在りし日の日本の金融業界に似ている。邦銀は1990年代後半の金融危機以降、貸出資産の償却を迫られ、預貸率は低下した。当時は、バブル経済が崩壊した後で国内の経済活動が停滞し、資金需要が伸びなかったことも大きい。預貸ギャップを有価証券運用で埋めることになり、国債保有を増やした。日本の債券市場の金利上昇を抑制する要因の一つとされる。米国でも20年7~9月期に米銀が国債やMBSを大量に購入し、米金利上昇を抑えた。米銀の「日本化」が進んでいる。

国債保有の増加は、将来の金利上昇リスクをバランスシートに包含していることと同義である。JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は10月、「(満期まで)5~10年の証券に投資することがあり、金利上昇で損失を被る可能性がある。収益を守るためだけにそうしたポジションはとらない」と述べた。JPモルガンは証券の評価損益が規制上の自己資本に影響するのを避けるため、一部の保有区分を資産運用が目的の「売買可能」から、価格変動リスクのない「満期保有」に変更した。

収益力の低下を受け、一部では事業の再編が起きている。大手4行の中で最も貸出収益への依存度が高いウェルズ・ファーゴは、店舗と人員の削減を強いられている。非中核事業の売却観測も流れる。規模で劣る地方銀行はさらに厳しい。スペインBBVAは16日、米南部地域で展開する米銀行部門を米PNCファイナンシャル・サービシズ・グループに売却すると発表している。

証券投資
一般には企業への経営参加を目的としてではなく,資金の有利な運用をねらいとして株式,債券などの証券類に投資することをいう。証券投資という言葉はまた国際投資上の用語としても使われるが,その場合には広狭2様に使われる。広義には直接投資に対する言葉として間接投資と同義に使われるポートフォリオ投資 portfolio investmentをいい,狭義には具体的に外国の有価証券類,主として株式,社債,投資信託受益証券に投資する証券投資 security investmentを意味する。参考:コトバンク
預金ギャップ
銀行のバランスシート上の預金金額から貸出金残高を差し引いた差額のことを意味する。資金需要の強さを表す指標として使われ、預金ギャップが小さいほど、資金需要が強いと言われている。長らく続く不況により、預金ギャップは拡大傾向にある。結果、資金需要が弱い「カネ余り」の状態が続いてたが、コロナショックを受けて預金ギャップはさらに伸長し、2020年5月には300兆円の大台に到達した。参考:大和総研
住宅ローン担保証券
資産担保証券(ABS)の一種で、個人向け住宅ローン債権を用いた債券型の証券化商品のこと。英語表記「Residential Mortgage Backed Securities」の略で「RMBS」といわれます。米国で個人の住宅取得を政策的に支援するために開発され、米国では一時、国債、社債を上回るまでに市場規模が拡大。日本でも、政府系の住宅金融機関である住宅金融公庫を中心に銀行や生保、ノンバンクが発行量を増やし、2006~07年ごろにピークに達しました。しかし、サブプライムローン問題に端を発したリーマン・ショックなどのため、現在では市場規模が縮小しています。参考:三井住友DSアセットマネジメント
米連邦準備理事会(FRB)
連邦準備制度(Federal Reserve System)とはアメリカ合衆国の中央銀行業務を担う統括機関です。金融政策の決定、発動を行ない、連邦準備制度の最終責任を負っています。市中銀行の監督や紙幣の発行は、傘下にある12の連邦準備銀行(Federal Reserve Banks)が行なっています。全国を12地区に分け、それぞれに連邦準備銀行を置いています(ニューヨークやボストン、フィラデルフィア、サンフランシスコなど)。参考:大和アセットマネジメント
バンカメ
米国最大手の民間の金融機関。一般消費者向けの銀行業をはじめ、投資銀行なども手掛ける。正式名称はバンク・オブ・アメリカ(Bank of America)であるが、「バンカメ」と略されることも多い。参考:weblio辞書

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