EU、イギリスとの通商交渉の決裂「通商協定なし」に備え 首脳会談でも進展なし

ニュースのポイント

  1. 2020年末を以てEU離脱の移行期間が終了するも通商協定合意までは程遠い状況
  2. 欧州委員会ライエン委員長とイギリスジョンソン首相は首脳会談を行ったが進展なし
  3. 米金融大手モルガン・スタンレーや米銀最大手JPモルガン・チェースなどの企業がイギリスから他国への移設を検討している

首脳会談でも進展なし 移行期間終了は年末に迫る

EUは10日、イギリスとの通商協定に関する交渉が決裂した場合にそなえ、緊急時対応計画を発表した。イギリスのEU離脱後の移行期間の終了は年末にまで迫っている。9日、EUとの通商交渉について欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長とイギリスのボリス・ジョンソン首相はベルギー・ブリュッセルで会談を行ったが、通商協定に関する進展は見られなかった。

10日、会談後にはじめての会見に臨んだジョンソン首相はEUと通商協定について合意する状況には程遠く、合意がないまま移行期間の終了時期を迎える「強い可能性がある」とし、「合意なき離脱」に備える必要があると述べた。現在はEUの通商ルールに則っているが、移行期間の終了とともにEUのルールに則っての通商をやめる。双方は競争ルールや漁業権などの分野で対立しており、合意できなかった場合、EUとイギリスの間に国境の管理や関税が課されることとなる。

ジョンソン首相はさらにEUと自由貿易協定を締結していない「オーストラリア型の選択肢」に備えることも考慮すべきだと述べた。現在、オーストラリアはEUと自由貿易協定の交渉をすすめてはいるものの、基本的にはWTO(世界貿易機関)のルールに則って通商している。同様にWTOのルールに則って通商するとなると、関税によってEUとイギリス間で売買されるものの価格が上昇することとなる。

EU側の交渉内容を批判、譲歩も辞さないとするも企業の国外移動計画が浮上

ジョンソン首相は合意に向けての譲歩も辞さないとしていたが、EUの法制度にイギリスを閉じ込め、それに従わない場合は関税などの制裁を課そうとしていると主張した。一方でEUはイギリスとの通商協定で合意が得られなかった場合に備え、緊急時対応計画をまとめている。移行期間終了後もEUとイギリスの間で空陸交通が滞らないようにする狙いだ。また双方の海域で最大1年間漁業を認める可能性にも触れられている。

一方で、EU離脱を受け企業の移動計画も浮上している。米金融大手モルガン・スタンレーは約12兆6億円規模の資産をイギリスからドイツに移すよう計画しているとブルームバーグが報じた。2020年待つにイギリスがEU単一の金融免許制度がから外れることを受けた措置だと見られている。さらに、米銀最大手JPモルガン・チェースも同様に多くの資産をドイツに移すことを計画している様子だ。

自由貿易協定
FTAは、特定の国・地域の間で、物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定です。関税や非関税障壁をなくすことで締結国・地域の間で自由な貿易を実現し、貿易や投資の拡大を目指すものです。FTA相手国と取引のある企業にとっては、無税で輸出入ができるようになり、消費者にとって相手国産の製品や食品などが安く手に入るようになるなどのメリットが得られます。FTAは関税の撤廃・削減を定めますが、EPAは関税だけでなく知的財産の保護や投資ルールの整備なども含めるといった違いがあります。参考:わらしべ瓦版
WTO
WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)は,ウルグアイ・ラウンド交渉の結果1994年に設立が合意され,1995年1月1日に設立された国際機関です。WTO協定(WTO設立協定及びその附属協定) は,貿易に関連する様々な国際ルールを定めています。WTOはこうした協定の実施・運用を行うと同時に新たな貿易課題への取り組みを行い,多角的貿易体制の中核を担っています。参考:外務省
合意なき離脱
離脱交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま離脱するケースを指します。離脱交渉に進展がないため、2018年夏ごろから現実味を帯びてきました。EU、英国は双方とも「合意なき離脱」に至るリスクを想定しており、企業や国民向けの文書を公表しています。「合意なき離脱」が起こった場合、今までなかった税関手続きなどが発生し、英国では輸入にどのくらい時間がかかるかわからないため、商品の品切れや物価の高騰などが発生する恐れがあり、生活や経済活動に大きな影響がでる可能性があります。参考:pwc Japan

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