拡大するタイの反政府運動 公務員や軍、警察内部の一部に共感の声

ニュースのポイント

  1. タイで政府や君主制に反対する運動が拡大
  2. 抗議者はプラユット首相の退陣と国王の権限を制限することを求めている
  3. タイの警察官や公務員、軍関係者の中には反政府運動に共感する人も少なくない

10カ月続くタイの反政府運動


民主派の野党政党・新未来党(FFP)が憲法裁判所から解散を命じられたことを受け、2020年2月に新たな抗議行動が始まったタイ。数千人のタイ人が政府の退陣や国王の権限の制限を要求した7月の抗議行動時には、陸軍軍曹だったエッカチャイ・ワングカファン(33)さんは一転して抗議参加者の側についたと英・ロイターが伝えた。

エッカチャイさんはFacebookに「独裁政権を倒せ」と書き、「真実を語ると投獄される国」というプラカードを掲げる抗議参加者の写真をシェア。軍の上官は、エッカチャイさんに政府や王室への批判につながる投稿を止めるように警告した。しかし、エッカチャイさんはこのとき、すでに軍を辞めることを決意しており実際に10月に軍を離れたという。

軍隊で広まる政府や国王への不満

タイでは、プラユット・チャンオチャ首相とラーマ10世(ワチラロンコン)による君主制に反対する抗議行動が10カ月もの間続く。そんななか、TwitterやFacebookなどのSNSでは、軍隊の一部で不満が広がっている。

ロイターの取材では、抗議参加者への共感、政府に異議を申し立てる人々への対処についての怒りや不満を表明する軍関係者が少なくないことが指摘されている。

この動きに軍部も危機感を覚えているのか、軍副広報官のシリジャン・ヌガトング大佐は、「社会不安につながりかねない誤解や挑発を生む内容を投稿するならば、それは不適切だ」と話し、軍関係者によるSNSでの活動を検証しているという。

タイでは、軍隊が重要な役割を担っている。1932年にタイの絶対王政が崩れて以来、現役軍人・軍出身者が13回に渡って国を統治。タイで軍隊が強力な権力を持っていることは、忘れてはならないことだ。

警察官や公務員にも波及

タイ王室や政府への不満や怒りの声は、軍隊だけにとどまらない。バンコク警察のキサナ・ファサンナチャロエン広報官(階級は大佐)はロイターの取材に、「こうした活動(王室への忠誠を誓うこと)は警察の職務の一環であり、法執行機関としての警察は政治的には中立だ」と語った。

また、別の警察官は、警察内のチャットグループの参加者に上官が王室の行事に参加するよう求めたことに対して、「これは警察の仕事なのか」との疑問をSNSに投稿している。さらに、抗議行動に賛意を示す公務員も少なくないという。

タイ軍事クーデター(2014年)
2014年5月にタイで起こった軍事クーデター。タイが立憲君主制に移行した1932年の立憲革命以降、19回目のクーデターとなった。インラック元首相(タクシン元首相の妹)など政治家を拘束、憲法と議会を停止し、プラユット陸軍大将が軍事政権を樹立した。アメリカはこのクーデターに対し、民主主義の原則を尊重しクーデターを起こさないよう要請。日本でも当時の岸田文雄外務大臣が民主政治の回復を強く求めるなど、国際社会でも大きな反響を呼んだ。参考:世界史の窓
プラユット・チャンオチャ
タイ王国の軍人で、政治家。1954年3月21日、ナコーンラーチャシーマー県で生まれる。反タクシン派の中心的人物。2014年8月25日、ラーマ9世(タイ王国・前国王)からの任命を受けて第37代首相に就任した。参考:新潮社 Foresight(フォーサイト)
ラーマ10世(ワチラロンコン)
タイ王国チャクリー王朝の第10代タイ国王。1952年7月28日に、ラーマ9世(タイ王国・前国王)とシリキット王妃の間に唯一の男子として生まれる。父・ラーマ9世の崩御を受け、2016年12月1日、国王に即位。正式名称の一部からマハ・ワチラロンコンと呼ばれる。参考:weblio辞書

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