中国経済が公共事業やIT先端産業の拡大を背景に成長 その一方で伸び悩む個人消費

ニュースのポイント

  1. 公共事業やIT先端分野を推し進める共産党政権の政策により、中国経済は4月以降、成長を続ける
  2. 政府の投資と、それに伴う回復とは裏腹に、個人消費は、債務問題や雇用への懸念から伸び悩んでいる
  3. 共産党政権は、日本経済にも好影響をもたらす半導体製造装置など最先端の製造技術を国内生産へとシフトし、経済成長を実現する必要がある

中国経済が公共事業やIT先端産業の拡大を背景に成長 その一方で伸び悩む個人消費

引用元:bloomberg.co.jp

中国経済の陰陽が鮮明になっている。2020年7~9月期の中国の実質GDP(国内総生産)成長率は、前年同期比4.9%のプラスを記録。成長率は4~6月期(3.2%増)からさらに伸びた。共産党政権が迅速に進めた公共事業(投資)などが回復を支えた。また、共産党政権が経済のデジタル化推進のためにIT先端分野の成長を重視したことも、パソコンなどの輸出増加を後押しした。国家主導の経済政策で経済の安定化が進んでいることは、中国経済の“光”の側面である。

一方で、中国経済全体を見ると、まだら模様だ。特に、個人消費の回復の伸び悩みが顕著だ。コロナショックの発生によって、債務問題(灰色のサイ問題)が深刻化したことや、雇用への不安上昇といった複数の要因が背景にある。それらは中国経済の構造問題であり、先行き懸念を高める“影”の部分だ。 コロナショックによって中国経済の光の強さが増す一方で、影の部分の深刻さも増し始めた。当面、共産党政権は国家資本主義体制を強化して経済成長力を高め、債務問題などへの懸念を払拭しなければならない。そのために欠かせないのが、最先端の製造技術だ。4~9月期の日本の貿易統計(速報)を見る限り、中国は製造技術の確保のために日本企業を重視している。米中対立の先鋭化が予想される中、日本企業は独自の要素を用いて最先端の製造技術を確立することが経済成長に不可欠だ。

DX加速が輸出伸長を支える

引用:premium.toyokeizai.net
足元の世界経済において、中国の景気回復が先行している。それを牽引している重要な要素の一つが、共産党政権の政策だ。まず、中国政府は人海戦術に加え、スマホアプリの早期開発と実用化や、医療体制の強化によって感染拡大を最小限にとどめた。それがインフラ投資などの実行と4月以降の生産回復をもたらした。ある意味、コロナショックの発生によって共産党の指揮の下で、必要な政策を迅速に進める中国独自の“国家資本主義体制”の強さが確認されたといえる。

特に、中国では新車販売台数の増加が顕著だ。9月まで6カ月連続で中国の新車販売台数は前年同月実績を上回った。それはEV(電気自動車)をはじめとする販売補助金の延長に支えられたという。その背景には目先の景気対策だけでなく、EUなどが重視する環境対策面で国際世論の主導を図るという中国の深謀遠慮がある。

また、高速鉄道の延伸など、公共投資も景気回復をサポートした。4月以降、公共事業に必要な鋼材や銅線などの需要は増えており、鉄鉱石や銅鉱石の価格は上昇基調が続く。また、コロナショックによって中国内外での経済の“デジタルトランスフォーメーション(DX)”が加速の一途を辿り、パソコンなどIT機器の輸出も伸びた。感染拡大によって世界的に需要が高まったマスクの輸出も増加。早期の感染対策は、衣料品など日用品の生産と輸出も支えた。

このような取り組みにより、共産党政権は、まず、感染の拡大を封殺した。それが迅速な投資の実行と生産の回復を支え、GDP成長率を上向かせている。このため、当面、中国経済が回復すると期待する主要投資家は少なくない。それは人民元の為替レートの推移から確認できる。投資に支えられた景気回復を理由に、中国人民銀行は追加の金融緩和に慎重だ。本土の金利には上昇圧力がかかっており、内外金利差の拡大から人民元は米ドルなどに対して底堅い動きを見せる。

それでも鈍い個人消費の動き

引用元:sankeibiz.jp
投資と生産の回復とは裏腹に、中国の個人消費の戻りが鈍い。1~9月期、固定資産投資は前年同期比0.8%増、工業生産も同1.2%増だったが、個人消費(小売店舗や電子商取引=EC=での売り上げを示す社会消費品小売総額)は同7.2%減だ。その要因として、債務問題、雇用、経済格差への懸念が考えられている。

中国の債務問題の背景には、資本の効率性が低下し、支払金利などのコストを吸収できる投資案件の減少が影響している。言い換えれば、状況としては、中国経済は成長の限界を迎えつつあると言える。そうした状況下で、コロナショックが発生し、中小企業などの資金繰り悪化や旅客鉄道などの需要低下が発生した。企業の信用リスクは追加的に上昇し、2020年の中国の社債デフォルト(不履行)件数は過去最高を更新する可能性があると言われている。

パンデミックが発生すると人々のリスク許容度が下がり、経済の潜在成長率は低下する。企業経営者は設備投資や採用に一段と慎重になり、雇用環境の改善には時間を要することになる。その状況下、それ以前の所得環境を前提に人生設計を行うことが難しくなる人は増え、節約志向を強いられるだろう。

経済格差への懸念も消費の低調を促す要因になる。カネ余り環境とIT先端企業などへの過度な成長期待から、株価は世界的に高いため、株式などの資産を持つ人と、持たない人の経済格差は拡大する。格差の拡大に加え、格差が固定化すると将来への希望は抱きづらくなり、個人の消費意欲はさらなる低下を招く。中国の農村戸籍と都市戸籍の違いはそうした状況に拍車をかける要因だ。そうした見方から中国では消費者が将来への懸念を強め、結果的に個人消費の回復が鈍いと考えられている。

最先端の製造技術で活路を

引用元:toyokeizai.net

過去、中国経済は政府が公共事業など投資を積み増し、その結果として生産が増え、所得・雇用環境が改善した。しかし、足元の中国では投資が生産の増加を支えているが、肝心の消費回復に時間がかかっている。中国の生産者物価指数(PPI)の変化率は前年同月比マイナスであり、過剰生産能力の問題も深刻を極める。消費マインドの回復は容易ではない。

共産党政権は求心力の維持のために、現時点では米国に比較優位性がある半導体製造装置など、最先端の製造技術を国産化、内製化し、経済成長を実現しなければならない。こうした経済成長は、日本にも好影響を及ぼす可能性が高い。4~9月期の貿易統計では、36の国・地域のうち中国、台湾、スイスのみ輸出額が増えた増加した。コロナショックの発生と米中対立によって、中国は日本の半導体製造装置や関連資材を求めており、日本工作機械工業会が公表する工作機械受注でも中国の需要は回復の兆しが見える。

コロナショック後のペントアップ・ディマンドに加え、中期的に世界の自動車産業ではネット空間に接続して自律走行するITデバイスとしての自動車を目指す“CASE”の取り組みが進む。その動きは中国でも例外ではない。長期的に自動車には都市空間の一部としての機能が備わる可能性も大きい。IT先端分野での製造技術や素材開発力を高め、最先端の自動車のコンセプトとそれを支える技術力の発揮は、中国でも存在感が高まり、同時に日本経済に大きな影響を与えるだろう。

実質GDP
実質GDPは、物価の変動による影響を取り除き、その年に生産された材の本当の価値を算出したもの。所得の伸びなどで、財の値段が変化することでGDPの数値も同時に変化してしまうことを避けるため、経済の実情を知る上で重視されている。参考:野村證券
実質GDP
実質GDPは、物価の変動による影響を取り除き、その年に生産された材の本当の価値を算出したもの。所得の伸びなどで、財の値段が変化することでGDPの数値も同時に変化してしまうことを避けるため、経済の実情を知る上で重視されている。参考:野村證券
コロナショック
コロナショックは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴う形で発生した世界的な株安の通称。2000年代後半に発生した「リーマンショック」となぞらえ、「コロナショック」と表現されているという。発生要因にあがるのは、新型コロナが世界中に蔓延しつつある先行きの見通せない状況が不安視されていたことに加え、感染症の拡大阻止を目的とした措置として各都市がロックダウン(都市封鎖)をはじめとする経済活動の停止に踏み切ったこともある。経済活動の部分的な停止によって人々の経済活動が制限され、その結果として経済活動が一層縮小するという悪循環も危惧されている。参考:weblio辞書
デジタルトランスフォーメーション
デジタルトランスフォーメーションは、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱された、「進化し続けるテクノロジーが人々の生活を豊かにしていく」という概念。一義的にはデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革する意味合いが強いが、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすものを指す。参考:MONSTARLAB
生産者物価指数
日本の企業物価指数に相当する統計で、米国の労働省が米国内の製造業者の販売価格を約1万品目について調査し、毎月発表するもの。物価上昇率を判断する際に用いられている。参考:カブドットコム証券
ペントマップデマンド
ペントマップデマンドは、景気後退期に購買行動を控えていた消費者の需要が、景気回復期で一気に回復すること。「繰越需要」とも呼ばれる。景気後退期における消費者の需要は消滅している訳ではなく、積み上げられ、繰り越しされる部分が潜在的に存在しており、景気回復とともに表面化することで一時的に需要が拡大する現象が起こるのである。参考:野村證券

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