ステーブルコインの規制案に相次ぐ反対 暗号資産業界からも批判の声

ニュースのポイント

  1. 米議会に提出されたステーブルコインの新たな規制案「STABLE」に反対意見が相次いでいる
  2. 米下院のトム・エマー議員は、「イノベーション保護の面で不適当な法案だ」と厳しく批判した
  3. 暗号資産業界からも反対論が噴出しており、規制案がステーブルコインが抱える問題解決につながるかは今後の議論が鍵を握りそう

ステーブルコインの規制案は、イノベーション保護の面で「不適当」

米議会に提出されたステーブルコインの新たな規制案「STABLE」に対し、反対の声が相次いでいる。米下院のTom Emmer議員は、長年に渡る暗号資産・ブロックチェーンへの支持を踏まえ、「STABLE」へ向けて「イノベーション保護の面で不適当な法案だ」と声明。暗号資産の業界関係者からも、法案の成立が業界の発展を阻害するとの声が挙がっている。

法案は、ステーブルコインに関わる規制の強化を図る狙い。ステーブルコインの発行を見込む企業などが、銀行設立許可書を取得し、当局の承認を得ること、取得後も継続的にシステミック・リスクに関する監査を受ける必要があることなどを盛り込んでいる。

仮に法律として成立すれば、米国居住者向けにサービスを提供する多くの企業が規制対象になる。例えば、ステーブルコインUSDCを発行するCircle社やGUSDを発行するGemini、USDTを発行するテザー社などへの影響も避けられない状況となる見込みだ。

法案の軸は、ステーブルコインを保有する顧客の保護だ。法案によると、ステーブルコインが連邦法の下で一種の預金としてみなされることになり、発行者は連邦預金保険公社(FDIC)の保険に加入するか、連邦準備制度に準備金を保持することが要求されるという。

Emmer議員は、仮想通貨メディアTHE BLOCKに対し、法案への反対の意思を織り交ぜながら、「米国で(ブロックチェーンなど)新しいイノベーションの成長支援を行っている私たちは、このテクノロジーについて学び、理解するために努力してきた。このテクノロジーは、低所得層から中所得層のアメリカ人、そして世界中の人々にも非常に有益な影響をもたらすだろう」と語っている。

Emmer議員は「Congressional Blockchain Caucus(議会ブロックチェーン会)」のメンバー。メンバーの一員として、COVID-19パンデミックに関しブロックチェーンによるソリューション導入の検討や、内国歳入庁などの機関における仮想通貨規制見直しなどをトランプ政権に求めてきた。金融業界に対しても主張を繰り返しており、SECがこれまでビットコインとイーサリアム以外の主要仮想通貨について明確な判断を行なっていないことも問題と指摘している。

またEmmer議員自身も仮想通貨を積極的に活用。政治活動についてステーブルコインも含め仮想通貨での献金も受け入れており、BTC、ETH、XRP、BCH、GUSD、USDC、BUSD、PAXなどを献金として受け入れている。

「法案は、デジタル通貨のイノベーションにとって大きな後退を意味する」との声も

 

法案に反対するのは、政治関係者だけでない。とりわけ、反対の声が大きいのが業界関係者である。

デジタル資産運用会社、コインシェアーズの最高戦略責任者であるメルテム・デミローズ氏は、トライブ議員のツイートに対して、「仮想通貨は歴史的に銀行セクターから除外されてきた人々にサービスを提供するコストを削減するものだ」と主張。その上で、この法律が導入されれば、コンプライアンスコストが増加し、その結果、トライブ氏が保護したいと望んでいる人々へのアクセスを遮断することになると危惧した。

ステーブルコインを発行する企業でもあるサークル社のCEO兼共同創設者のジェレミー・アレール氏は、ツイッターで「この法律は、米国におけるデジタル通貨のイノベーションにとって大きな後退を意味し、ブロックチェーンとフィンテック業界の両方の進歩を制限してしまうだろう」と、法規制に厳しい主張を述べた。

ステーブルコインは、法定通貨と価格が連動し、法定通貨に代わる裏付け資産として投資家などから期待の声を集める反面、マネーロンダリングやシステムのガバナンスといった複数の側面で問題を抱えている。法案「STABLE」がそれらの問題を克服する手立てになるかは今後、議会における議論やパブリックコメントなどで、肯定的な意見を集められるかが鍵となるだろう。

STABLE
米下院で提出されたステーブルコイン発行者と、ステーブルコイン関連サービスを提供する焦点を当てた法律。ステーブルコインに関連する商業活動を規制することで、フェイスブックが主導する暗号資産ディエムや、現在市場で提供されているステーブルコインといった新しいデジタル決済手段によってもたらせるリスクから消費者を保護することを目的としている。具体的には、書面による承認を得ずに、ステーブルコインの発行やステーブルコインの商業活動の展開を禁じるという。参考:THE BLOCK
テザー(USDT)
テザー(USDT)は、ステーブルコインを代表する暗号資産で、Tether Limittedが発行している。ドルに固定されたペッグ通貨で、発行したテザーの量と、Tether Limitted社が保有するドルの量を同じにすることで価値が保たれている。参考:CoinPartner
USDC
USDCは、暗号資産系の事業を手がけるサークル社によって開発されたステーブルコイン。テザーと同様に、ドルにペッグされている。開発元のサークル社が、ニューヨーク州金融サービス局から暗号資産事業を許可する免許の交付を受けるなどしており、高い信頼性と透明性の元で発行、運営されているのが特徴だ。参考:CRYPTO CURRENCY CAMP
連邦預金保険公社(FDIC)
米連邦預金保険公社は、米国で被保険銀行における所定の預金を保護するために、預金保険業務を行う米国政府の独立機関(公社)を指す。1929年の世界恐慌による銀行の相次ぐ破綻を受け、当時の連邦議会が1933年に設立した。現在、加盟銀行については、破綻した場合に、普通預金や当座預金、譲渡性預金などの預金者一人当たりに対して10万ドル、個人退職勘定として25万ドルまでの預金保険を提供している。参考:iFinance
議会ブロックチェーン会
議会ブロックチェーン会は、第114回議会で設立された米国下院の超党派組織。暗号資産業界や政府と協力し、ID管理や金融資産の追跡、医療記録管理、知的財産権の改善にかかるブロックチェーンテクノロジーの意味を研究、理解するためのプラットフォームの展開を目指している。参考:Congressional Blockchain Caucus

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